クラシカル・ホメオパシー

「Heilpraktiker」とは?

僕が名刺やHPで使っている「Heilpraktiker(ハイルプラクティカ)」というドイツ語の肩書きは、どういう意味なのかと聞かれることがありますので、ここで説明します。

「Heilpraktiker」というタイトルは、国が与える医療免許を持つ治療師を意味しています。法的に正確な翻訳は、「医術従事免許」を持つ「医術従事者」になります。

ドイツでは約80年前から、医療を職業とする人のために、2種類の医療免許があります。「医師免許」と「医術従事許可」です。前者は主に西洋医学を専門とする医者が必要とする免許で、後者が主に代替医療を手段として医療を行う医師のための免許です。方法論が違っても、具体的な医療に関しては両方の免許が許す医療行為の範囲がほぼ一緒ですが、医者がしなければならない、また医術従事者がやってはいけないことが幾つかあります。例えば、死亡証明書の発行、裁判における医学的診断、一般に売っていない薬(抗生剤、ステロイドなど)の処方箋発行、性行為感染病の治療、レントゲンや放射線利用などです。

なぜドイツは医療のために2種類の許可を作ったのでしょうか。その背景には、近代科学に基づく西洋医学が唯一可能な医学なのではなく、他の医療や医学(西洋医学から見れば一般的に代替医療と呼ばれる医学たち)も、医療としての効果や意味を持っており、尊重すべきだという考えがあります。言い換えれば、国民のニーズにあわせて医療にも選択肢を提供するという考え方です。医術従事法によって国の医療システムの中に代替医学にもきちんとした法的枠組みが与えられています。

興味のある方のためにこの医術従事法の条項1の(1)と(2)を紹介します。
(1)医師免許を持たずに、医術(医療行為)に従事したい人は、そのための免許が必要です。
(Wer die Heilkunde, ohne als Arzt bestallt zu sein, ausüben will, bedarf dazu der Erlaubnis.)
(2) この法律の定義では、医療行為というのは、人間が持つ病気、疾患、肉体的傷害の診断、治癒や緩和のために、職業や稼業的に行われた全ての営為を意味しています。それが人に頼まれて行われた場合にも当てはまります。
(Ausübung der Heilkunde im Sinne dieses Gesetzes ist jede berufs- oder gewerbsmäßig vorgenommene Tätigkeit zur Feststellung, Heilung oder Linderung von Krankheiten, Leiden oder Körperschäden bei Menschen, auch wenn sie im Dienste von anderen ausgeübt wird.)
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さて、この医従事術許可をどのように取得するかについてですが、この許可を得るためには国家試験を受ける必要があります。試験の内容は西洋医学の医学教育の根本知識です。専門医に必要な専門知識は問われませんが、田舎で開業する医者が必要とする、医学教育の基礎やあらゆる医学分野の根本的な知識が試験の内容です。試験は筆記試験と口答試験に分かれます。筆記試験は、日本のセンター試験に似た形で、全国で同じ内容で同じ日で行われます。口頭試験は、自分が開業したい地域や町の一番トップの医務官の前で行います。筆記試験を通った人だけが口答試験に呼ばれます。口答試験で落ちた場合、次の年にもう一度ゼロから出発です。この医術従事許可を得るための試験は、法曹、猟師や税理士になりたい人のための国家試験と同様に、ドイツでは一番難しい試験の一つに数えられています。不合格率が平均で6−7割と言われています。(Spiegel online 4.3.2013、PDF

僕も – 試験勉強はもともと大嫌いなものですから – 大変な苦労しながら、46歳でその試験に(ちょっと自慢しても良いでしょうか:一発で)受かりました。日本でのホメオパシー営為にあたっては、このドイツの免許に法的な意味はありませんが、日本で開業する前に、少なくとも自分の母国が必要とする法的条件を満たしたいという思いがありました。

なにより試験自体よりも、そのための西洋医学のあらゆる分野の勉強や医学基礎教育が、今の仕事に非常に具体的に役に立ちます。自覚症状で悩んでホメオパシーを受ける人も居れば、病院である病気に診断されて、ホメオパシーを受けにくる人も居ます。いずれにしても、本人が診断された病名や自覚症状の背景にある病理を西洋医学的に理解した上で、ホメオパシー治療を進められることが、とても力強いのです。