クラシカル・ホメオパシー

ドイツの健康保険は、ホメオパシー治療費を払ってくれますか。

6月のブログで、ドイツのハイルプラクティカ(Heilpraktiker)という職名の意味と法的立場を説明しました。「Heilpraktiker」というのは、「医術従事免許」を持つ「医術従事者」のことです。ドイツでは、ホメオパシー医療を開業するために、この免許が必要です。

このブログを読んだ人から、「ドイツではホメオパシー治療を受けた場合に健康保険で払えますか」と聞かれました。そこで、今回はドイツにおける健康保険とホメオパシーの関係を話しましょう。

余談ですが、僕はかねがね、日本語の「健康保険」や英語の「health insurance」という呼び方が不思議なんです。健康というものは家財や車のように保険をかけられるようなものでしょうか?健康に保険をかけると、病気は避けられるのか?なんとなく、頭のいい広告代理店が考えた呼び方に聞こえてしまうのです。損害保険と同様、健康に損害があったときに初めて下りる保険なのですから、私にはフランス語の「病気保険」(assurance maladie)やドイツ語の「病人保険」(Krankenversicherung)のほうが正直に感じます。

名称に限らず、ドイツと日本の健保制度を安易には比較できません。そこで最初は、おおまかにドイツの健保制度を紹介します。日本では、国民の一人一人が参加しなければならない国民健康保険が健保のベースです。一方、ドイツの健保制度は二つの柱でできています。ひとつは、主に自営業の人が加入する「私的健康保険(私健保)」(PKV, Private Krankenversicherung)。もうひとつは、主に被雇用者のための「法的健康保険(法健保)」(GKV, Gesetzliche Krankenversicherung)です。ドイツ国内には、これら二つの健保を取り扱う保険会社が数多くあり(法健保が130社以上私健保が40社以上)、互いに競争しながら経営業績を伸ばしています。

私健保の場合、保険料は保険会社が決定します。契約の適用範囲や契約者の年齢と健康状態に応じて決まる保険料は、全額、契約者の負担です。医療を受けた際は、まずその治療費を自己負担しますが、申請後に保険会社が全額返済してくれます。

法健保の場合には、保険料は国が決めます。金額は契約者の収入によって違いますが、最近は、総支給額のおよそ14%です。被雇用者である契約者がその半分を払い、残りの半分は雇用主側が負担します。治療を受けた時は、低率の自自己負担手数料を払い、残りの治療費は、保険会社と病院の間で直接決済します。簡単に言うと、ドイツの法健保と日本の国民保険が似ています。

いかがですか。

私健保では、契約者自身が、自分のニーズや要望に応じて、保険会社との契約にどんな医療が含まれているのを選べます。入院した場合、個室を利用できるかどうか。虫歯治療に金や高いハイブリッドセラミックスを使えるかどうか。病気になった時、ホメオパス(または、他の代替医療を行う医師)に治療してもらえるか。保険を適用する、治療の具体的な内容を自由に決めることができ、その契約内容によって、保険会社が保険料を算出します。従って、私健保が(医師であれ、ハイルプラクティカであれ)ホメオパシー治療を払うか払わないかは、個人個人の契約内容によります。

法健保の場合はどうでしょうか。その名前からも分かるように、適用範囲や料金は、国が法律で決めます。ただしコスト節約のため、その適用範囲は必要最低限の医療に限られているのが現状です。例えば、法健保では、虫歯の埋めものに、アマルガムやセメントしか適用できません。入院が必要になると、指定病院の大部屋で、その病院の担当医に治療を受けることになります。眼鏡が必要になっても、殆んどの場合、部分的にも払ってくれません。ホメオパシーを含めて、代替医療の治療が基本的に適用されておらず、法健保は医学的に最小限の医療しか適用できないのです。その代わり、給料が多いか少ないかに関わらず、皆に最低限の医療を保証します。

法健保の保険適用範囲があまりにも最小限の医療に限られているため、法健保だけでなく、追加保険に入ることが良くあります。たくさんの保険会社で、医者やハイルプラクティカによるホメオパシー治療をカバーする保険が提供されています。条件と内容がいろいろありますので、ちょっと具体例を見ましょう。

ドイツ最大手の私健保会社、Deutsche Krankenversicherung DKV に KNBH という追加保険があります。入ると、ハイルプラクティカでのホメオパシー治療コストを80%、1年間で最大限¥130.000まで払ってくれます。25才で加入すると、毎月の料金は¥ 650で、60才で入ると¥ 2.000になります。

ARAGという保険会社がTarif 482を提案しています。ハイルプラクティカでのホメオパシー治療コストを60%を返済するタイプの追加保険です。限度額無し。毎月の料金は25才で¥ 1.400で、60才で¥ 2.400になります。

もう一つの例を挙げると、INTER Krankenversicherung のAVP+AHP追加保険がホメオパシー治療コストの80%を、1年間¥330.000まで返済します。月々料金が25才で¥ 3.300で、60才で¥ 4.200です。
(全てのデータは versicherungsvergleiche.de による。)

ドイツでは月々何千円の追加保険に入ると、健康保険がホメオパシー治療のコストの8割を負担します。このように、保険会社がホメオパシー治療のための追加保険を提供する背景には、三つの大きな要因があると思います。

① 需要:保険会社にとって商売が成り立つように、ホメオパシー医療を健康管理や病気の治療のため選ぶ人々がたくさんいる。

② 経済的合理性:健康会保険社の経営的判断では、ホメオパシー治療のコストパフォーマンスが、普通の西洋医学と比べて、充分(もしくは、より)経済的である。

③ 選択肢:国の健保制度の枠組みが、国民一人一人の医療に対して、ある程度の選択肢を保証してくれる。医療に選択肢があれば、より個人のニーズに添った、治療が可能になる。幅広い医療の選択肢は、実は無駄の少ない、経済的医療と繋がっています。そして最終的に個人の健康と幸せ、そして国の盛況にも貢献します。その一方で、選択肢の自由の反面には、自己責任の真剣さがあることも事実です。ドイツと日本における選択肢と自己責任のテーマについては、また別の機会に考えたいと思います。