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2013.09.14

ある患者さんへの手紙(2)

8月30日ブログに紹介したハーネマンの手紙の後半です。

「もっと賢くなって下さい。自分自身のことを第一に大事にして下さい。他の気遣いはすべて、貴方にとって二の次のことにならなければなりません。そして誰かが、貴方のプライドに訴えながら、貴方の気力と体力を超えるようなことを、強制的にさせようとするときこそ、あなたの幸せで健康な生活に反する行動に、絶対に誘われないように気をつけて下さい。褒め言葉が一種の賄賂です。そういうことばに耳を閉ざして、それに振り回されないように冷静に、落ち着いた気持ちで悠々と自分の道を歩き続けて下さい。道理をわきまえた賢明な男のように。喜びのため、ゆっくりとこころや体を通じて喜びを味わうために、人間はこの世に居るのです。仕事をするというのは(自分を酷使せずに)、その喜びを得られる程度で十分なのです。
それ以上、あれ以上に稼ぐため、こういう名誉も、ああいう名誉も得るため、この人にもあの人にも役に立つため、盲目になった人々は絶えずせかせかしながら走り回ります。こういうてんてこ舞いが、我々の真の繁栄の破滅を招く、最もよくある破滅であり、若者が老化して早逝する、最もよくある原因なのです。
静かにものごとを進めようとする、平然かつ泰然たる人も目的に達します。そしてより穏やかに、より健康に生きて長生きします。
そしてこういうふうに穏やかに生きる人こそが、忙しすぎて我に返ることができない人より、ときどき、たったひとつの幸運な思いつきによって、あるいは、或る自ずと浮かんだアイディアによって、自分の経済的状況をよりよく好転させることができるのです。
ばたばたしても、より速くは走れません。
まず第一に、すこし平然さ、冷静さ、のんきで悠々とした心構えを身につけてください。そうして初めて、私が思う立派な男になれます。 ..... そして、ポケットに最後の20円しかなければ、そのときも、嬉しく明るく思って下さい。人生には、我々のことを大事に思う力が働いていて、そして、ある良いきっかけがまた全部を戻してくれるのです。体力を食べ物と飲み物によって補うため、耐えられない寒さと熱さから身を守るために、一体生きるためには我々人間は、どれぐらい必要でしょうか。前向きな気持ちがあれば、それほど必要でないものも、大きな苦労を伴わずにやってきます。賢人なら、あまりものを必要としません。費やさなくてすんだ体力は、薬によって補給する必要がないのです。」
(Briefe Hahnemanns an einen Patienten aus den Jahren 1793-1805, hrsg. v. B. Schuchardt, Tübingen 1886)