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2024.01.24
医療を考える患者がどのような種類の、あるいは質の医療を受けられるのか。 医師はどのような治療を提供できるのか。その選択肢と法的枠組みは、(近代国家では)主たる三つのプレーヤーの力関係によって決まります:①医療の法的枠組みを決める政府の機関、②できるだけ多くの国民が、経済的に医療にアクセスすることを可能にする健康保険、③薬や治療機器を製造する製薬会社と医療機器メーカー。患者はできるだけ早く、お金をかけずに病気から解放されたいものですが、この三つのプレーヤーはそれぞれ異なる利害を持っています。
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ハーネマンが病気の原因について語る。(その3)
間違った治療や薬害も、病気の原因になり得ます。医療がもたらす新たな不調と病気は、最近の言葉では「医原病」(iatrogenic disease)と呼ばれています。ハーネマンは、病気の原因について細かく説明している革新的な論文「経験の医術」のなかでは、これにあまり触れませんでした。が、その後1833年に出版された『医術のオルガノン』の第五版以後で、アロパシー医学の治療が患者にもたらす害について、非常にはっきりと、そして批判的に語っています。「従来のアロパシー医学は、投与している薬の長期的な、多くの場合恐るべき影響を自覚していません。そして、色々な作用物質を混ぜて同時に治療に使うことによって、その影響をわざわざわからなくしているようにも見えます。こういった強い薬を、多くの場合長期間、頻繁に、繰り返し、大量に投与することによって、従来のアロパシー医学は患者の身体を傷めつけます。
ハーネマンが病気の原因について語る。その2
前回のブログで述べたように、ハーネマンは「Heilkunde der Erfahrung(経験の医術)」という論文において、病気になった人間の個別治療の必要性を強調する文脈で、病気の原因について説明しています。我々人間は、宇宙に存在するすべてのものと親和しつつ、また戦いつつ、深く繋がっており、それ故、人間の身体に影響を及ぼす、病気にする要因は数えられないほどたくさんある、というお話です。その抽象的な説明をよりわかりやすくするために、論文の3ページにも渡る長い注釈を使って、ハーネマンはその要因の具体例をいくつか書き出しています。この注釈を、下記に日本語へ訳出します。ドイツ語の原文は区切りなしで書かれていますが、読みやすくするため、適当に改行や段落を入れておきます。
ハーネマンが病気の原因について語る。その 1
人間はどうして病気になるのか?哲学的には答えは簡単です。生きている人間は、孤立的な存在ではないからです。生きることはすなわち、あらゆる次元やレベルで、数えられないほどたくさんのものや人との相関関係において存在する、ということでしかありません。命でさえも頂きものです。人間はそうした無数の相関関係の中で、能動的に人や環境に良い影響を与えることもあれば、悪い影響を及ぼすこともあります。同時に、受動的なかたちで人や環境から良い影響を受けることもたくさんあれば、悪い影響を被ることもあります。その複雑な仕組みの中でそれなりにバランスを保ちながら、悪いことを減らし、良いことを増やすことで、本人も、周りのものや人も、健やかに伸びていくことができます。しかし、悪い影響が多すぎると、自分ないし自分の周りにいるものは害を受け、壊れる或いは病気になる可能性があります。生きることは、こういったかたちでのギブアンドテイクに根ざした営みであるがゆえに、人が病気になる可能性は避けられません。
2022.03.21
医療を考える1958年、中国で毛沢東は「大躍進政策」の一環として「四害駆除運動」を宣言し、四害のひとつとしてスズメの駆除を命令しました。畑の穀物を食べるスズメがいなくなれば、食料の収穫が増えるという目論見です。果たしてスズメの駆除運動は成功しました。その具体的方法についてはウィキペディアの「四害駆除運動」を参照してください。スズメがいなくなった結果、(穀物と共に)その餌である害虫が激増しました。そして、天敵のいなくなった害虫によって農作物は以前より荒らされ、結果としてスズメの駆除は、1,500ー4,500万人の餓死者を出した中国の大飢饉に大きく貢献してしまったのです。毛沢東の政策はその後、「三分の天災、七分の人災」と批判され、毛沢東が一時的に力を失う原因になりました。
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コロナ展望録。その8
去年、新型コロナウイルスが発生したころは、そのウイルスに対する薬も、そのウイルスが引き起こすCovid-19の治療にも特効薬がなかったことが、「非常に危ないウイルス」「特別に危険な病気」というイメージに貢献しましたし、大きな不安の一つでした。発生から一年が経った今でも、まだ特効薬は見つかっていません。おそらく、これからも見つからないでしょうし、開発不可能でしょう。どんな病原体だろうが、またどんな病気であろうが、科学の薬で助かるはずだと思う人にとっては、この言い方は非常に悲観的に聞こえるかもしれませんが、まぎれもない事実です。
孔子が書いた論語の中に、こんな有名な話があります:孔子は「あなたが大臣だったら、まず何をしますか」と尋ねられたところ、こう答えました。「言葉が現実に合うように、名前を正します(正名)」なぜなら、言葉が正しくなければ、言葉の意味が混乱します。言葉の意味が混乱すれば、何事もできなくなってしまう(名不正、則言不順、言不順、則事不成、事不成)。 国を治めることと病気を治すことは多少違いますが、政治と同じように医術も言葉が正しくないと、何事もできなくなってしまう危険があります。これから、数回に亘り、このブログで、医療における言葉の使い方の順当さについて考えたいと思います。今回はまず、「治療と治癒の違い」についてです。
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