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2021.11.17

2021年の穂高リトリートセミナー ・参加者の体験談(1)

Living Homeopathy シリーズ、第5回の勉強会「癒やすこと、癒されること。治療家になるためのホメオパシー入門セミナ一」に参加しました。5日間のリトリートは、知識を慌ただしく詰め込むような合宿ではなく、言葉になること、ならないこと、全てが身体の奥に沁み込んでいくような、深い学びの時間となりました。

毎日のプログラムは、庭に出てゆっくりと1時間ほど体を動かすタオ・ヨガで始まりました。いわゆるスポーツやエクササイズとは違って、関節が無理なく開き、身体が自然に目覚めていくようなヨガでした。私はこれを、自分で自分の身体を、そしてそこに流れるエネルギーを感じる練習として楽しみました。猿やキツツキの気配を感じながら、関節が無理なく開いていき、だんだんエネルギーの通りがよくなり始めると、ふと森の匂いが濃く感じられる瞬間がやってくるのが毎朝楽しみでした。人と自分を比べることなく、自分が今どう感じているのかに集中する練習にもなりました。

この、自分が今どう感じているのか、感じたことをきちんと受け止めること、自分に対して正直であることというのは、リトリートを通じて何度も出てきたテーマで、私にとっては特に重要な学びでした。ホメオパシー的に生きること、ホメオパシー的に考えるということはどういうことなのか、エルマーさんのお話は常にこの一番大きな主題に立ち還ります。自分の感覚を大事にするということは、その大きな主題の重要な一部分でもありました。「自分に正直に」と言うは易しですが、自分の感覚から逃げないでいることには時に勇気が必要です。自分の感覚をいなして、その場に合わせてやり過ごす方が、日々の生活の中ではインスタントな(そして時に浅はかな)解決だからです。これにまずは気づくこと、そして自分の気持ちを恐れずに感じる練習を、今も続けています。

こうしたことを含むホメオパシーの髄ともいうべき考え方は、毎日少しずつハーネマンのテキストの抜粋を読んでいくことで、少しずつ、くっきりとわかってきました。今から200年以上前に提示された医学が、現在も変わらず有効であることに驚かされると同時に、セミナーの冒頭にエルマーさんが言ったように、「全てのことはシンプル」で、「複雑にしているのは私たち」だと実感できました。

いくつかの代表的なレメディについて、マテリアメディカを読みながら勉強した時、ついあれこれと型にはめ込んで考えようとしてしまう私たちでしたが、レメディ像を把握することがまずは重要であり、全てのケースはそれぞれ個別に判断しなければならないということ、つまり、患者を類型化するためにレメディを覚えるのではないということが、今の段階では重要な学びでした。花粉症の治療の際に使われる代表的なレメディを学んだあとでケーススタディを行った時、数年前の自分のケースが例に出たのには思わず笑ってしまいましたが、花粉症だけでなくホメオパシーによるさまざまな治癒を自分で経験していることは(5年以上ホメオパシーを受けています)、自分にとって大きな財産であり、さまざまな気づきを既に与えてくれていたのだと実感しました。

診療においてクライアントとどのように向かい合うのか、ということについてのレクチャーは、ホメオパスとクライアントという関係にのみあてはまるのではなく、人と人のあらゆる関係性に通じるものでした(ここでも、自分の感覚を大事にするというテーマが再び登場しました)。治療家が治すのではなく、クライアントが自分で治るということ。治すのは、この宇宙やあらゆる生命を生かしている力(ハーネマンの言うLebenskraft)なのだということ。こうした理解に基づいて、ジャッジせず、謙虚に、ニュートラルに、クライアントに対峙することを教わりました。私は普段の医療に携わっているわけではありませんが、さまざまな仕事において心掛けていることと、最終的に通じる部分があったことは嬉しく思いました。つまり、相手がスペースを感じられるようにすること。自由に感じられるようにすること。別の選択肢に気づけること。帰る時に少し視界が広く、明るく感じられることなど。

穂高養生園が私たちに与えて下さったのは、深い安心でした。特に、長年お料理を担当されている鈴木愛さんにお話をして頂けたこと、彼女の料理哲学がまさにホメオパシー的だったことは、深く印象に残っています。慌ただしい普段の生活では、あえて自分の感覚を鈍磨させているようなところがありますが、ここで得た安心は、感受性が豊なることを自分に許し、丁寧に作られたお料理だけでなく、空気のすみずみまで味わわせてくれるものでした。

5日間の間に学んだことは、私の中に深く沈んで、セミナーが終わってからもふとした時に新たな気づきをもたらしてくれています。美しい秋の山の景色、穂高養生園という素晴らしい場所とスタッフの皆さん、それぞれの思いを持ち寄った個性豊かなメンバー、そしてエルマーさんが準備して下さった丁寧なプログラム、これらすべての調和に深く感謝しています。そして、この調和と同じ種類の奇跡によって自分が日々生かされ、あるいは癒されているのだと実感できたことが、何より嬉しく、また大きな学びだったと感じています。

橋本梓