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2021.11.20

2021年の穂高リトリートセミナー ・参加者の体験談(2)

ホメオパスのエルマーさんには、かれこれ8年来お世話になってきました。処方されたレメディのもたらす力を目の当たりにしてきました。ホメオパシーに関する本を教えてもらって読んだこともあります。なるほど、と納得し腑に落ちることも多くありました。ただ、自分の体の内なる声を聴くべしとなんとなく自分なりに感じていましたが、そのときどきに直面している状況にすぐに影響を受け、声を聴きそこねたり、解釈を間違ったり、気がつくと聴こうともしなくなっていることもありました。もっとホメオパシーをよく知れば、つまり何が肝心なことで、何がその根底にあるのかを理解すれば、診察でのエルマーとの対話ももっと深く理解できるだろうし、また、自分自身の状態の把握や表現もうまくできるのではないかと思いました。


Living Homeopathy「ホメオパシー入門セミナ一」の計画について聞いたとき、内容もさることながら、なんといっても大好きなアルプスの山の中、穂高の自然の中での合宿であることにとても魅かれました。穂高養生園については全く知識もなく、ただただ山の自然の中で、ホメオパシーについてより深くより積極的に知ることのできる絶好の機会と考えすぐに申し込みました。一番乗りの申込だったそうです(笑)。


治療家のための入門ということでしたが、治療家を目指さない人にもホメオパシーの基本を理解するためによく構成されていて、かつ、深い気づきをもたらすものでした。私がそれまでホメオパシーの本質をきっちりと理解していなかったことがよくわかりました。経験に基づく知識、病気の捉え方、生命力、患者さんへの向き合い方、人間に関する理解、自然とのつながり、宇宙の摂理、魂と精神と身体、祈り、謙虚さ、などといった言葉が次々に出てきました。こうして眺めるととても遠くかつ抽象的な話のようですが、実は日々の自分の営みや行動、思考、経験とつながっていることがよく理解できたように思います。形而上学的なことでも理想論でもなく、まさに今ここにいる自分という存在に関わることでした。すべては個々としてとらえるものであり、その都度異なり、ひとつとして同じものがない。枠にはめたり、決まり事にあてはめるのではなく、常に自由に、創造的に、クリエイティブに向きあう。何よりも目から鱗のようだったのは、ホメオパシー的生き方や患者さんに向き合う治療家エルマーの姿勢について話を聞いた際に、これはホメオパスだけでなく、自分の生き方、人生の過ごし方、人との付き合い方、仕事に関する考え方について、日々よりどころにできる何か、常にそこにもどっていくことのできる何かが示された、と受け取れたことです。実に心強いことでした。それぞれの参加者がそれぞれに、深くかつ具体的ななにかを得て持ち帰ったセミナーだったと言えると思います。18世紀末にハーネマンがここまで的確に人間の存在、生命のこと、魂と精神と身体のことを経験に基づいて把握しかつ具体的に細かく著述していることに驚くとともに心を打たれます。どこか仏教的な思想さえ垣間見えるように思いますし、現代にそのままあてはまる同時代性も感じました。


毎朝7時から庭で行うタオヨガも、早朝の鳥のさえずりも、ときどき姿を見せる野生の猿も、朝日に揺れる木立も、勉強中にエルマーが入れてくれる煎茶の香りと味わい、毎日2回の美味しくてたっぷりとした完全菜食、何杯飲んでも飽きることのない三年番茶、新鮮な空気、散歩、日光浴、養生園で働く人々のたたずまい、赤松と漆喰でできた居心地のよい部屋、部屋の窓側のドアを開けるとすぐに庭におりられること、夜の星空、ヒノキのお風呂、そして参加メンバー間の出会いと交流。それらもすべてセミナーを構成する要素でした。身を置いている環境が自分にいかに影響を及ぼすかも実感しました。3日目から明らかに身体の調子が変わりました。4泊5日は終わってからは短く感じられる日程でしたが、皆でともに学び、多くの気づきを得たあの5日間は宝物のような時間で、それ以降自分は少し変化したような気がしています。読んだり聞いたりして理解したことと実際の経験・実感とがはっきりとリンクしたのだと思います。そのことを今とても感謝していますし、これからますますホメオパシーをよく知りたいと考えています。

山口真樹子