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オミクロンについてわかってきたこと
コロナ展望録。その17
オミクロンと名付けられたコロナウイルスの新株が世界中で流行っています。日本はこれまで、持ち前の強い島国根性で「感染者」(PCR検査で陽性と診断されたケース)数を抑えてきましたが、じきに国内でも速やかに感染が拡大することは避けられません。必要のない不安に陥らなくてよいように、オミクロンについてわかってきたことをまとめました。
オミクロン変異株の出発点は、アフリカ南部と思われます。その発見以来、パニックのニュースは世界中を駆け巡り、南アフリカは孤立させられ、特に観光産業は悲惨な経済的影響を受けました。南アフリカの医師は、感染者には「非常に軽い症例」が多いと指摘し、「重症者も死亡者も見当たらない」と述べています。イギリスでも同じことが報告されています。「私たちが見ているのは重篤な病気でも死でもありません。すぐにすべてが落ち着くでしょう。数週間後にはオミクロンは大騒ぎするようなことではなくなるでしょう。」と語っているのは、去年の4月までイギリスのワクチンキャンペーンのトップ責任者を務めたClive Dixです。(PDF)
オミクロン株が広がるスピードがデルタ株に比べて非常に早いとはいえ、それによる重症化や入院は著しく少なく、死亡例も非常に少ないと、多くの国の医師から報告されています。(南アフリカ1、南アフリカ、イギリス、アメリカ、カナダ)これまで、COVID-19の重症化リスクが大人に比べて非常に低いとされている子供についても、オミクロンによる重症化リスクはさらに数倍低くなっているとの報告があります。(PDF)
イギリスでは、COVID-19の陽性例の多くがオミクロン株によるものになって以来、「その感染症による死亡者数は、インフルエンザが流行している年の半分になっている」と報告されています。(PDF)
世界で一番早くワクチンキャンペーンを始めたイスラエルでも、ワクチン接種の進んだ2021年12月にオミクロン陽性者の強いピークがあったにもかかわらず、重症例やCOVID-19関連の死亡者の増加は見られません。(PDF、ウェブ)
フロリダ州の排水調査によると、2021年12月中旬からオミクロンが優占的コロナ株となっていますが、臨床感染例はほとんどありませんでした。(PDF)。カリフォルニア大学の研究者がデルタの感染者とオミクロン感染者の調査を行いました。(PDF) Rochelle Walensky(CDC、アメリカ疾病予防管理センターの所長)がその結果ををツイッターで以下の通りまとめます:
「オミクロン株に感染した人の重症度を、デルタ株と比較した研究。
症状による入院のリスクが53%減少
ICU入室リスク74%減
死亡リスク91%減
人工呼吸が必要な患者数:0」
スコットランドでは、テストで見つけたオミクロン陽性者24,000例のうち、入院は15例のみでした。(PDF) デンマークでは、2021年12月19日の時点までに 17,155人のオミクロン陽性者のうち30人(=0.17%)が入院しましたが、死亡例はありませんでした。テストで陽性と判明した人のうち、79%が2回、10.8%が3回のワクチン接種を受けていました。(PDF)
香港大学の研究者は、イン・ビトロの実験(試験管や培養器を用いて体内類似環境で行う)とエクス・ビボ(生体から直接採取した組織で行う)の調査で、人間の気管支細胞ではオミクロンはデルタの70倍の速さで繁殖する一方、肺組織では増殖スピードが10倍以上遅いことを発見しました。オミクロンの急速な伝播、病気の重症度、死亡の少なさを、いずれも裏付けできる発見です。(PDF、PDF)
オミクロンによる感染に対して、これまで開発されたコロナワクチンによる防御効果はほぼゼロです。ワクチン未接種者、ワクチン接種者、ブースター接種者に等しく感染します。(PDF、PDF)人口の大部分へのワクチン接種により集団免疫を得る試みは、オミクロンが流行したおかげで達成不可能な目的になりました。
ファイザーワクチンを開発したドイツのバイオンテック社の社長、ウール・シャヒンさえ、「3回のワクチン接種では、新型の株を阻止することはできません。……. 3回のワクチン接種者も病気をうつすことができます」と認めています。(PDF)
はっきりとした結論を出すにはまだ早すぎますが、ワクチン接種者はワクチン未接種者より感染しやすいと推測させる統計やデータがあります。デンマークの研究者は、デルタ株とオミクロン株の感染率を調べるため、12月の前半1週間に11,937世帯を追跡し、家庭内の二次感染率(SAR)を調べました。デンマークでは人口の80%前後が2回、50%以上は3回ワクチンを接種しています。その調査の結果は以下の通りです。非接種者の場合、家庭内でオミクロンに感染するリスクはデルタ株の感染と比べて、1.17倍高く、つまりほぼ同じです。2回接種者はそのリスクは2.61倍高く、3回接種者(ブースター接種者)の場合、そのリスクが 3.66倍高くなります。つまり、ワクチン接種回数が多ければ多いほど、オミクロンに感染するリスクが上がっています。(PDF )オミクロン株がワクチン接種率の高い国(イギリス、デンマーク、アイルランド、アイスランド)でいち早く流行したことからも、同じことが推測できます。
それでも、不安になる必要はありません。今のところ、ワクチン接種をしてもしなくても、オミクロン感染の症状はマイルドな経過を辿ることがほとんどです。おまけに、感染しても無症状で済むケースがデルタ株より何倍も多いとう研究発表もあります。(PDF)
発病した時のオミクロンの症状については、あまりはっきりしたことは言えません。全体的にはインフルエンザより普通の風邪に似ていますので、その症状は個人によって違います。倦怠感、喉の痛み、筋肉痛、頭痛、吐き気、嘔吐、微熱、鼻水など。
言い切るにはまだちょっと早すぎますが、これまでの経過を見ると、オミクロン株は昔から人類の中で風邪として流行している、ヒトコロナウイルスとして知られるウイルスたち(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)に似た、風邪の病原体になったような印象を受けます。このウイルスたちは、現在地球上に存在する風邪のうち約30%の責任者ですので、ほとんどの人の免疫系は、既にそれらをよく知っています。したがって、人間の免疫は、たとえオミクロンを直接経験していなくても、旧型のコロナウイルスたちとの付き合いから来る交差免疫(cross-immunity)を既に獲得しています。
オミクロンの広がりが進んでいる国のデータを見ると、オミクロン株はデルタ株に置き換わる傾向があります。実際そのようになれば、ありがたいことに、オミクロンが流行る地域ではCOVID-19という病気はほぼ見あたらなくなり、コロナ風邪を引く人が増えるでしょう。その場合、オミクロンの感染はCOVID-19の発病に対する一種の生ワクチンとして機能する可能性が高いです。
例えば、2020年の末からワクチンキャンペーンを始めたイスラエルを見ると、ワクチン接種が進んだ後にもかかわらず、2021年の死亡者の波は感染者の波と並行して上がりました。ただし、オミクロンの陽性者が急激に増え始めた12月においては、COVID-19関連の死亡者数については、これまでのような増加は見られていないのです。(ウェブ)オミクロンの感染はワクチン接種より効果的に見えます。こうしたことを背景にイスラエルは、オミクロン株の自然感染による集団免疫について検討する専門家が増えています。(PDF、PDF)
二年間もコロナ禍で疲弊してきた世界の人々にとって、オミクロン関連のニュースはほっとさせるものが多いです。しかし、オミクロン株の広がりがもたらす大きな問題が一つあります。それは、これまでのコロナウイルスの封じ込め対策の正当性が見出せなくなるということです。オミクロン株のようなスピードで風邪として流行るウイルスに対しては、ロックダウン、国境閉鎖、濃厚接触者の追跡、隔離、無症状者のPCR検査などは、完全に無効に、そして無意味になります。オミクロンのおかげで、新型コロナウイルスとの戦争は戦わなくて良くなりそうですが、コロナウイルス感染拡大のコントロールに奔走した人たちが、自分たちの「敗北」を認める勇気を持っているでしょうか?
ともかく、オミクロンが定着している国では、コロナ対策の戦略の変化が始まっています。オミクロンの速やかな拡大と軽症化の事実に直面して、無症状と軽症の人のテストを止めたり、隔離期間を短くしたり、義務的なワクチン接種の効果についての議論をやめたりするような、これまで推進してきたパンデミック対策を緩める国や地域が増えています。ヨーロッパではまずスペインが、これまでの新型コロナウイルスの感染監視体制を止めて、コロナウイルスの患者も他の呼吸疾患の患者と同様の監視体制とする、すなわちパンデミックの前の従来のやり方に戻す、と発表しました。(PDF)
「スペイン政府はコロナウイルスをインフルエンザと同様に扱う計画に取り組む。ペドロ・サンチェス大統領によると、政府は数週間前から、コロナウイルスの流行を一般的なインフルエンザの流行と同様に捉え、例えば症例の徹底的な管理を放棄する計画に取り組んでいる。同時に「欧州レベルでこの議論を開始しようとしている」。月曜日のEl País紙によると、政府はコロナウイルスをこれまでの呼吸器疾患の一つとして見なす計画を策定し、具体的には、詳細な症例数から離れ、医療専門家が集めた有意なサンプルに基づいて、病気の広がり方を計算することになるという。」(1月10日のEFE通信、PDF、El Pais)
オミクロン株は速やかに流行しましたが、我々の新しい生活様式や国のコロナ対策が、オミクロンの新事実に照らし合わせてアップデートされるまでには、まだもう少し時間がかかりそうです。オミクロン株を怖がらずに、希望を持って待ちましょう。
追加:PCRテストで見つかった陽性者と死亡者の関係がオミクロン以後どれほど違ってきているのか、これを国ごとに見たい、そしてその展開を観察したい人のためには、ロイター通信が提供する便利なウェブサイトがあります。日本、香港、台湾、シンガポール、インド、イスラエル、スペイン、イギリス、ポルトガル、デンマーク、スウェーデン、イタリア、フランス、米国など。
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