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2025.06.30

発熱について(4)ホメオパシーはどのように熱に対応するのか


高熱が出た時、ほとんどの人は熱をできるだけ早く下げたいと思います。早く楽になりたいのは当然のことでしょう。そのため、熱の時にホメオパシーのレメディを処方されると、多くの人はレメディに解熱効果を期待します。しかしながら、レメディは解熱剤のようには効きませんし、単純に熱を下げる意図で処方されるものではありません。レメディの効き方は、解熱剤のように熱を直ちに下げるに限りません。

それが適切に選ばれていれば、レメディは病人の自然治癒力を活性化し、免疫力の働きや健康の回復を促進するものです。発熱時、レメディに対する患者の具体的な治癒反応は、患者によって、そして病気のステージによって違います。熱が早く下がることもあるし、病気を一番早く、そして根っこから治すために、一時的に熱が上ることもあります。発汗してから熱が下がることもあるし、同じような高さで熱が続くこともあります。自己治癒力の働きは、病人とタイミングによってさまざまです。

しかし、レメディの服用後にただちに熱が下がらなかったとしても、患者の様子が基本的に楽になるのをほとんど場合に観察することができます。例えば、機嫌が悪くてずっとぐずっていた子供が、高熱が続きながらも穏やかに眠る。熱が出てから赤ちゃん返りして、お母さんに抱っこされずにはいられなかった子供が、一人で楽しく遊んでいる。節々が痛く、呼吸が荒く、ベッドでずっと寝返りをうっていた患者が、節々の痛みが引いて、落ち着て寝られるようになる。悪寒と熱の入れ替わりに苦しんでいる患者の悪寒が治る、などです。

近頃使われているホメオパシーのレパートリー(症状とレメディの対応をまとめた辞書のようなもの)では、何百種類もの発熱時に助かるレメディが列挙されています。ホメオパスは、個人個人の患者の状態に一番合う、その人の免疫力を一番よく応援するためのレメディを決めるために、熱で苦しむ病人の様子をできるだけ全体的かつ正確に把握します。

発熱の具体的な様子は?体のどこでもっとも熱を感じるのか?手先と足先の温度はどうか?身体の内側にこもっている熱なのか?放射するような、体の表面で一番暑く感じる熱なのか?熱はずっと似たような温度で続くのか?上がったり下がったりするのか?何をきっかけに、いつから熱が始まったのか?悪寒があるのか?悪寒と発熱の時間的な関係はどうか?交互に来るのか、それとも同時に感じるのか?汗の様子はどうか?顔色と目の表情は?舌の様子は?口や唇は乾燥しているのか?水分の欲しがり方は普通より多い、少ない?何も飲みたがらないのか?どんな飲み物を欲しがるのか?食欲は?病人の落ち着きは?落ち着かずに、ずっと寝返りしたり、起きたり、体を動かしたりするのか?それとも死んだように、びくりともせず静かに寝ているのか?熱の時の夢や寝言は?機嫌はどうか?放っておいてほしいのか?人懐こくて、ずっと誰かにそばにいてほしいのか?抱っこしてほしいのか?どんな部屋の温度だと楽に感じるのか?窓を開けたり換気することを好むのか?閉まった暖かい部屋を好むのか?しっかり分厚く掛け布団をかけてほしいのか?それとも布団をはいだり取ったりするのか?熱に伴う他の症状は?たとえば頭痛は?節々の痛さは?気持ち悪さは?嘔吐は?などなど。

こういった情報が多ければ多いほど、より正確にレメディを決めることができます。印象的なひとつの事例として、コロナ禍に病気になった患者のケースを紹介します。電話で応対しながら、治癒に導くレメディがなかなか見つかりにくく、上がったり下がったりする熱で患者は何日も苦しみました。ある時、看病している患者の奥さんが、「熱が上がった時、いつも片方の足が暑く、もう一つの足が寒く感じる」ことに気づきました。この珍しい症状によって、本格的な治癒をもたらすレメディを見つけることができました。(プロフェッショナルのために補足:Extremities; coldness; foot; one cold, the other hot: chel dig. ip. LYC puls.)

熱を伴う感染症(肺炎、インフルエンザ、コロナなど)をホメオパシーで治療した後、病気なる前と比べて患者がより元気に感じるとしばしば報告されています。おそらく患者は、はっきりと病気があらわれる以前から、すでに調子が絶好調ではなかったのです。自分の元気がもつれていなければ、感染が入り込む隙間がなければ、感染が広がるような弱点がなければ、感染病は発症し、辛くなることがありうりません。(これについては以下のブログを参照)。患者が病気になったのは、罹患以前に調子が既にアンバランスな状態にあったからです。解熱剤(抗生剤(抗ウイルス剤などは、熱や病原体の繁殖をある程度抑えることができても、発症する以前の、そうしたアンバランスな状態は治せません。自己治癒力を活性化することのできるホメオパシーで感染症を治療すると、その病気の背景にある元気のもつれも治り、感染症のしんどい症状が治るだけではなく、より深く、包括的な健康の回復に繋がります。

次回のブログでは、発熱を避けることのできる、もしくは治癒の働きを促進できる、「ウェットソックス」という簡単な処置を紹介します。