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2025.11.02

インフルエンザ予防接種の賛否(その2)

前回のブログでは、35年前に国立公衆衛生院感染症室長を務めた母里啓子と現在の厚労省の間に、インフルエンザワクチンについての考え方に大きな隔たりがあること、賛否両論を紹介しました。現在の医学研究では、インフルエンザワクチンのリスク(危険性)とベネフィット(効果)をどのように評価しているのでしょうか。最近の調査や研究をみてみましょう。

● Prof Michael T Osterholm et.al., Efficacy and effectiveness of influenza vaccines: a systematic review and metaanalysis,(インフルエンザワクチンの有効性と実効性:系統的レビューとメタ分析)、The Lancet, January 2012(PDF)

これは近年実施された、インフルエンザワクチンの有効性に関する方法論的に最も包括的で厳格なメタ分析です。Osterholm他は、1967年から2011年の間に発表された、インフルエンザの予防接種に関する5,707本の研究論文を厳しく調べて分析しました。このうち、方法論として科学的な基準を満たす研究は、5,707本のうちわずか31本しか見つかりませんでした(科学として情けない近代医学の状況を物語っています)。その31本による結論は、以下のようにまとめられています。

「インフルエンザワクチンは、ウイルス学的に確認されたインフルエンザに対して中程度の予防効果を発揮できますが、その効果はシーズンによって大きく減弱したり、効果が全く見られない場合もあります。65歳以上の成人に対する予防効果については、証拠が不足しています。LAIV(生ワクチン)は乳幼児では最も有効です。臨床効果および有効性が改善された新しいワクチンが必要がされています。」
(Influenza vaccines can provide moderate protection against virologically confirmed influenza, but such protection is greatly reduced or absent in some seasons. Evidence for protection in adults aged 65 years or older is lacking. LAIVs consistently show highest efficacy in young children (aged 6 months to 7 years). New vaccines with improved clinical efficacy and effectiveness are needed)

なぜ、より良いワクチンが必要だという結論になるのでしょうか?簡単に説明しますと、中程度の予防効果しかないワクチンならば、打たなくても良いからです。どんなワクチンでも、個人の独特な体質や敏感性によって、健康な人にも短期的な副作用または長期的な薬害をもたらす可能性があります。そのリスクをふまえて予防接種を行うならば、ワクチンは非常に高い予防効果を持たなければなりません。現在使われているワクチンは、リスクとベネフィットバランスが悪すぎるのです。

● 日本の厚生労働省は、インフルエンザ予防接種の推奨にあたってそのリスクについて触れません(PDF)。残念ながら、従来の近代医学の主流においては、ワクチン予防接種による健康被害はひどいやり方で軽視されています。製薬会社と国の機関は、接種後の短い間(大体1週間から4週間)に生じた不調しか、接種による被害とみなしません。さらには、不調の原因となる生理学的メカニズムが明確に証明できない場合には、その疾病はワクチンによる健康被害として認められません。その因果関係について、中立な立場で積極的に研究できるための資金も出しません。本人や家族がその経験を踏まえて、また常識に照らし合わせ、ワクチンによる被害としか思えない場合でさえも、その現場の声と経験的データが予防接種健康被害救済制度や、ワクチンの安全性に関する研究に届かないことがほとんどです。そのため、ワクチンによる薬害的長期疾患は、大幅に無視されています。

こうした被害の多くは、ワクチンの中に含まれている添加剤(アジュバント)によるものです。アジュバントは、接種されているウイルス(ないしウイルスの部分)に対する免疫の反応を増強するために不可欠な添加剤です。アジュバントは免疫系を強く刺激する役割を果たさなければなりませんので、多くの場合、はっきりとした毒性を持つもの(例えばアルミニウム化合物)が用いられます。ワクチンによってもたらされた可能性のある免疫疾患が、そのアジュバントの毒性が直接作用したためなのか?あるいは人工的に煽られた免疫力が過剰反応によって混乱し、自分の体を攻撃するような機構がその背景にあるのか?それついては未だに解明されていないことが多いです。

ワクチンによる健康被害に研究の焦点を当てやすくするため、ASIA症候群(Autoimmune/inflammatory syndrome induced by adjuvants、アジュバントによって誘発される自己免疫/炎症症候群)という概念が2011年に提唱されました。(PDFPDF)現在頻繁に使われているワクチンのうち、ASIA症候群と強い関連を示すワクチンは以下の通りです。(PDF

⚫︎ インフルエンザワクチン
⚫︎ B型肝炎ワクチン
⚫︎ HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)
⚫︎ COVID-19ワクチン(mRNA・アデノウイルス系)

メーカーや商品によってその中身は多少違いますが、インフルエンザワクチンに使用される主なアジュバントは、アルミニウム塩(アルミニウムヒドロキシド、アルミニウム硫酸塩、アルミニウムリン酸塩)、スクアレンベースのオイルインウォーターエマルジョン(MF59, AS03)、ウイルス様粒子(ビロソーム)、チレカワノキから抽出されるサポニン(例:マトリックスM)などがあります。(PDF)。予防接種を受けるたびに、この添加剤は体内に取り込まれます。血液循環に直接取り込まれるのです。

ワクチンの有効性及び効果についての研究の結論と、ASIA症候群のリスクを考慮すると、ワクチンメーカー、厚労省、ワクチン推奨派が強調している、インフルエンザワクチンの優れた有効性と安全性は大いに問われるべきものです。すなわち、普遍的なインフルエンザワクチン接種政策を推進するためには、ワクチン効果の誇張とリスクの軽視ではなく、より堅実な科学的証拠やデーターがが必要です。

● インフルエンザワクチンの有効性を評価するための研究は、予防接種によってどの程度感染者数が減少するのか、重症化や死亡が避けられるのかについての調査を通して遂行されます。こうしたアプローチは、学者が行う机上の研究として当然のものとされていますが、実際の生活においては事情がもう少し複雑です。

ちょっと視野を広げましょう。冬になると、インフルエンザウイルスと同時に、たくさんの他の呼吸器系ウイルス(主に鼻・喉・気管・肺などに感染して疾患を引き起こす)が活発になります:ライノウイルス、RSウイルス、新型コロナウイルス、昔から存在しているいろいろなコロナウイルス、アデノウイルスなど。通常このウイルスたちが引き起こす症状は、インフルエンザによる不調とよく似たものなので、発症のきっかけになるウイルスが違っても、全てがILI(Influenza Like Illness、インフルエンザ様疾患)とういう概念でまとめられています。呼吸器系の症状が何らか発症した場合、その具体的な症状は個人の受容性や体調によって違いますが、微熱に加えて、頭痛・筋肉痛・喉の痛み・咳・鼻炎・胸の痛みのいずれかの症状があれば、大体インフルエンザ様疾患(ILI)と診断されます。

オランダの研究グループは、ILIとインフルエンザ予防接種の関連について面白い調査を行いました。(PDF)2011年から2013年までの二度の冬にわたって、60歳以上の住民をインフルエンザ予防接種を受けたグループと受けていないグループに分けて、それぞれのグループにおけるILIの発症率と、その発症の背景となったウイルスについてきめ細かく調べました。その結果はこうです:非接種群と比較すると、接種群ではインフルエンザウイルスによるILIの発症率が少ない一方で、ILIの発症率自体は非接種群と同等だったのです。言い換えれば、インフルエンザの予防接種を打った人と打たなかった人たちは同じ確率で、インフルエンザのような疾患で病気になります。苦しみには違いはなく、その苦しみを引き起こすウイルスの種類の割合だけが違っているのです。この調査は以下のように整理され、結論づけられています。

「ワクチン接種はインフルエンザウイルス感染の発生数を減少させるが、インフルエンザ様疾患(ILI)の全体的な発症数を減少させることはない。他の病原体がその差を埋める。我々は、呼吸器感染症に対して高い受容性をもつ集団が存在する可能性を示唆する。」
(Vaccination reduces the number of influenza virus infections but not the overall number of ILI episodes: other pathogens fill the gap. We suggest the existence of a pool of individuals with high susceptibility to respiratory infections.)

「本来、インフルエンザウイルスによって引き起こされるILIがワクチン接種によって減少すれば、ILI全体の発生率も低下すると予想されていた。しかし、その効果は観察されなかった。むしろ、ワクチン接種群と非接種群でILIの発生率は同程度であった。」
(The incidence of ILI cases was expected to decrease by a reduction in influenza virus–caused ILI through vaccination; however, this effect was not observed. Instead, the incidence of ILI remained the same between the vaccinated and non-vaccinated individuals.)

「本研究で最も注目すべき発見は、ワクチン接種者と非接種者の間でILI発生率がほぼ同じであった点である。この結果は、呼吸器感染症に対して受容性が非常に高い人々の集団が存在する、という仮定によって説明できる。ワクチンによってインフルエンザウイルス感染による症例数が減少すると同時に、他の病原体による感染症例数の増加がそれを相殺していると考えられる。」
(The most striking finding in this study was the similar incidence in ILI cases observed between vaccinated and the non-vaccinated individuals. This may be explained by assuming that a pool of people exists that is highly susceptible to respiratory infections. The reduction by vaccination in the number of cases caused by influenza virus infections is offset by a rise in the number of cases caused by infections by other pathogens.)

この調査の結果から考えると、(安全でない)予防接種によってインフルエンザウイルスの感染を避けようとするよりも、個人個人の、特に呼吸器感染症に対して高い受容性をもつ人たちの体調、生命力、全般的な免疫力を上げる方が、インフルエンザの予防にとっては有効です。

● 毎年秋になると、大きな病院、老人ホームや介護施設の幹部たちが、スタッフ全員にインフルエンザの予防接種を強く求めたり、ないしは義務化したりします。そのプレッシャーが強ければ、予防接種を受けたくない従業員は板挟みのような状況になります。このワクチンポリシーの背景には、スタッフ全員がワクチンを受ければ、従業員から利用者への感染が減り、それによって利用者のインフルエンザの重症化、肺炎と死亡のケースを減らせるという希望的観測があります。

介護施設における従業員のインフルエンザ予防接種の効果について、これまでのデータや調査を全て調べ、その結果を分析するスタディがあります。

Roger E Thomas et.al, Influenza vaccination for healthcare workers who care for people aged 60 or older living in long-term care institutions (review) (高齢者介護施設に居住する60歳以上の人々を介護する医療従事者のインフルエンザ予防接種について、レビュー)Cochrane Database of Systematic Reviews, 2025(PDF

本調査の結論:「勤務する医療従事者にインフルエンザワクチンを提供する介護施設の利用者を、ワクチンを提供しない施設の利用者と比べると、勤務する人の予防接種は、入所者のインフルエンザの発症率にほとんどもしくは全く影響しない。」
(Offering influenza vaccination to HCWs based in LTCIs may have little or no effect on the number of residents who develop influenza compared with those living in care homes where no vaccination is offered.)

● 最後にちょっと視点を変えて研究論文、分析、調査から離れ、インフルエンザ(と肺炎)による死亡率とインフルエンザ予防接種との歴史的な関係を見てみましょう。以下のグラフは、20世紀における、アメリカでのインフルエンザと肺炎による死亡率を表しています。(CDCの元データPDF

アメリカ合衆国のインフルエンザおよび肺炎による死亡率

1918年ごろのスペイン風邪によるピークが目立ちます。もう一つ目立つことは、インフレンザと肺炎による死亡率が1900年から1950年ごろまで、いろいろな波があっても継続的に下がって、50年代からほぼ横ばいになっています。インフルエンザに対するワクチンは1936年にロシアで初めて開発されました。最初のうち、軍力を失わないように主に兵士に使われました。1950年、1960年代から、インフルエンザワクチンは毎冬予防接種キャンペーンによってアメリカの一般市民の中で広がりました。というのは、インフルエンザ予防接種の開発と普及以前と関係なしに、インフルエンザの死亡率が20世紀前半にずっと下がっています。そして低いところで安定したところで、積極的な予防接種キャンペーンを打っても、より下がりません。

予防接種の発見と普及によって、二億から三億の感染病による死者が救われたという台詞に聞きなれた人に、ちょっと驚く事実ですが、ほとんどの感染病の死亡率は20世紀初め頃から、(20世紀真中や後半の)ワクチン導入のずっと以前に著しく下がっています。その主な原因は、医療介入や新保ではなく、国民一般の生活向上(綺麗な水道水、下水システム、冷蔵庫、栄養状況など)による健康度の改善です。そのことについて、アメリカのケネディ米保健福祉長官の面白い解説がります(7分)。ぜひ見てください。(リンク

次のグラフは、インフルエンザ予防接種率を加えた、1960年から2000年まで状況を表しています。

アメリカ合衆国のインフルエンザおよび肺炎による死亡率とインフルエンザワクチン接種率

1968年の香港型インフルエンザによる死者のピークと、1976年の豚インフルエンザに対する偉大な予防接種キャンペーンによる接種率の一時的な上がりもよく見えます。1980年代から予防接種率が年々と上がっていますが、それと同時に死亡率もはっきりと上向くようになりました。もちろんそれは単純な原因関係として誤解してはいけません。死亡率の上がりの背景に色々な違う要因もありうります(例えば、健康保険システムの悪化、不健康な食生活による国民の健康低下、一般的な高齢化などなど)。このグラフを見て、はっきり言えるのは、インフルエンザ予防接種をどれほど増やしても、肺炎とインフルエンザの死亡率の低下には全く効果を示さないし、有効性がありません。

多くの研究者や医者が、インフレンザワクチンの無意義と問題点を知っていますが、「たとえよく効かなくても、それでも何もしないよりはましだ」と言いながら、予防接種キャンペーンを支持しています。しかし「何もしないよりましだ」という考え方は、ワクチンが害を及ぼす可能性を無視しているということです。

ちょっと古風な考え方かもしれませんが、医者が患者の対して医療倫理として primum non nocere (まず何よりも害を与えるな)というの基本原則を守るべきだと思っています。「善をなす」以前に「害を避ける」ことを優先すべきですので、「不要なワクチン接種といたずらな勧奨をしないこと」(母里恵子)というスタンスを守るべきです。次回のブログは、ホメオパシーによるインフルエンザの予防と治療について語ります。