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But cutting off an apple ...
ー ホメオパシーから見た、ガン治療の主要点 ー
“But cutting off an apple does not cure an apple tree of growing apples”という言葉があります。ロンドンにおいて偉大な業績を残したホメオパス、ジェムス・コンプトン・バーネット(James Compton Burnett, 1840-1901)の言葉で、「レメディーによる腫瘍の治癒の可能性」(Curability of Tumors by Medicines, London 1893)という出版物の中に書かれたものです。
英語の場合は非常にコンパクトで分かりやすいのですが、日本語に直してみるとちょっと回りくどい表現になります。「りんごの実を切り取ることによって、その木がりんごを作り続けることは治らない」あるいは「りんごの実を切り取っても、その木は実らせ続けることを止めません」になるでしょうか。
もちろん、りんごの木にりんごがなるというのは病気ではありません。バーネットがここで言いたいのは、人間の体にできた腫瘍(良性であれ、悪性であれ)を手術で切り取っても、この処置だけでは、腫瘍を発生させている病気の治癒にならない。腫瘍がまた出てくる可能性が高いということなのです。
その理由について、バーネットは著書の前書きにこう書いています。
“My standpoint is that a tumour is the product of the organism, and to be really cured the power to produce the same must be eliminated, got rid off; cutting it off merely rids the organism of the product, leaving the producing power where it was before, often the operative interference acting like pruning a vine; i.e. the tumour producing power is increased, and the fatal issue is brought nearer.”
「私の考えはつまり、腫瘍が有機体の産物であるということです。きちんと治癒しようと思えば、その腫瘍を作り出す力を取り除く必要があります。腫瘍を取り切ることは、単にその産物を有機体から除去しただけに過ぎず、その産物を生み出す力は以前と変わらずにありのままに残されています。それどころか、この除去手術が葡萄の剪定に似たような働きをもたらし、腫瘍を生み出す力をさらに増長させて、致命的な結果が一層近づくことがよくあります。」
( James Compton Burnett, 1840-1901)
100年以上が経った今でも、ガンの病理についてこのバーネットの明確な見識が、一般のガン治療にあまり取り入れられていないように見えます。腫瘍が見つかった場合の多くは、患者さんも医師も、目で見える腫瘍の大きさと有様(良性か悪性か)が一番気になって、結局は腫瘍をなくす、あるいは小さくするという処置に留まっています。このように腫瘍そのものを一番大きな問題にしてしまうと、治療は単に腫瘍との戦いになります。手術、抗ガン剤、放射線といった武器を使って、いかにその腫瘍を全滅させるかが治療の唯一の焦点になるのです。この戦いで忘れがちなのは、腫瘍そのものが病気の根っこではなく、腫瘍はガンという病気の表れ、その症状の一つしかないということです。
腫瘍との戦いは、ほかの戦争と同様に、もう一つの危険性をもたらします。病気の症状と戦いながら、無駄に力(時間とお金も含めて)を浪費する危険性です。手術、抗ガン剤、放射線のような強い武器による治療との戦い自体が、病人の傷んだ生命力をより弱めることになる場合が多いのです。下手にすると、病気の根っこと取り組む余裕、そのために必要な体力と判断力がなくなります。
医学では腫瘍の別名として、新生物という呼び方があります。この名前が言うように、腫瘍は撃ち込まれたピストルの弾のように、異物となってその人の命を脅かすものではなく、その体、つまり有機体が、生きるという行為の中で自らの生命力で作り出した体の一部です。言い換えれば、腫瘍というものは、その人の生き方、その人の生命力から離して考えられないし、治療もできません。
もちろん、本人の命を脅かすような腫瘍を生み、成長させる(あるいは少なくともその成長を許す)生命力は、それ自体かなり調子が乱れて病んでいる(ないし老化してきた)生命力です。そうであれば、ただ腫瘍と戦うより、その病的に働いている生命力をより元気にさせ、元の気に戻すように頑張ったほうが、病気のより根本的な治癒になるのではないか、というのがバーネットの見解です。腫瘍を作り出すまでに乱れた生命力が、また正常な状態に回復すれば、腫瘍もそのついでになくなります。
“… tumours are vital growths, and must be vitally approached and regarded. What comes vitally, must go vitally, and therefore gently, painlessly, and comparatively slowly.”
「腫瘍は人間の生命力が生み出した物ですから、その生命力を通じて理解すべき、処置すべきです。生命力によって出てきた物は、生命力を通じてなくさなければならない。従って、優しく、痛みなしに、比較的ゆっくりと。」
… tumours are ALIVE: they are GROWTHS; the come via vita, and vitally they must be cured; and for this process time, often much time, is needfull.“
「腫瘍は生きています。成長するものです。生命力によって生じます。従って生命力を通じて治癒されるべきなのです。そのプロセスには時間、それも多くの場合、たくさんの時間が必要です。
“… the organism GROWS tumours vitally, and anything that is to cure, really cure must bring back the perverted VITALITY of the part of the normal”
「有機体はその生命力によって腫瘍を成長させます。いかなる治療であっても、本当の治癒のためには、この歪んでいる生命力を正常に戻す必要があるのです。」
バーネットが最も効果的、かつ合理的と判断して選んだ治療法とは。それがホメオパシー医学でした。彼が残したたくさんの治療記録のなかには、現在、ガンで悩むクライアントの治癒に向き合うホメオパスにとって、大事ななヒントが数多く残っています。
ガン、あるいはガンらしき物を診断された時に、たくさんの決断が迫っています。この病気とどのように付き合うのか。どんな治療を選ぶのか。どんな病院、どんな先生に頼むのか。特にガンの場合、情報や助言が多すぎて、かえって迷うほどです。
ホメオパシーでガンも治せますか、と良く聞かれる事があります。そのときにちょっとドライに答えます。ホメオパシーであれ、西洋医学であれ、治った例もあれば、助からなかった例もある、と。どんな名医に頼んでも、どんなに効くと言われる新薬を使っても、とても良い評判のホメオパスを訪ねても、病気が絶対治る保証はどこにないのが真実です。
唯一言い切れるのは、ガンを診断された時に、ホメオパシーを生かした場合(ホメオパシーだけで直してみても、西洋医学的な処置と平行にホメオパシーを取り入れても)、その患者さんが単に手術、抗がん剤、放射線だけで闘った場合と比べて、より高いQuality of lifeを保たれることが非常に多いということです。何故かと言えば、ホメオパシーは病気に取り組みながら、肉体にできた腫瘍と闘うだけではなく、細かくやさしく、患者さん個人のベストを考え、身体や心、人間全体を見ながら、ケアできるからです。病人とその周囲の人々が苦しむのは、症状だけではありません。病気を取り巻くあらゆる環境に対して、ホメオパシーは共に向き合うスタンスを持っている、とお伝えしたいのです。
バーネットの腫瘍の病理分析とその治療のスタンスを読み、ご自身の状況と照らし合わせて少しでもこころが動くようでしたら、後戻りできなくなるまえに、一度、専門のホメオパスを訪ねて、セカンド、ないしサードオピニオンを聞くことをお薦めします。最終的にホメオパシーを治療に取り込むかどうかは別として、その話し合いの後、自分がこの病気とどのように付き合いたいのか、より冷静に、より広い視野と選択肢をもって決められるようになると思います。
このブログで引用された、バーネットの文書のすべては以下の二つの本による。
Curability of Tumors by Medicines, London 1893
(レメディーによる腫瘍の治癒の可能性)
Tumors of the Breast and their Treatment and Cure by Medicines, London 1888
(乳腫瘍 - そのレメディーによる治療と治癒)
若い時に非常に優秀な、「反」ホメオパシー的な医者だったバーネットが、何故、西洋医学からホメオパシー医学へ転向したかについて、「ホメオパスであるため、50の理由」(50 Reasons for Being a Homeopath, London 1888)という有名な本のなかで述べています。これはホメオパスになりたい人にも、ホメオパシーをバッシングする人にも、大変読み甲斐がある本です。
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