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クラシカル・ホメオパシーの特徴 2
ーー セッション(診察)の行い方 (その1) ーー
従来の西洋医学では、病気を治療する際、事前に患部の検査とそのデータに基づく診断が必要です。病名が決まらないと処置が決まりません。簡単にいうと、検査と診察の目的は病名の診断なのです。ほとんどの場合、病名が分かればお勧めの処置の選択肢が自ずと決まってきます。その病名を探り当てるために、医者は目の前にいる患者の、個人的で主観的な病気の感じ方や症状の表れ方を排除し、主に客観的で普遍的な症状、言い換えれば、物質的に量れる病的変化やデータに着眼します。
一つの例を挙げましょう。咳で悩んでいる人が診療に来ました。医者は聴診器、レントゲン、喀痰(カクタン)検査、気道検査、アレルギー・テストなどで、この患者の肺や気道にどんな病気があるかを決めます。このように病名を診断するとき、彼らが全く興味を示さないものがたくさんあるのです。
例として幾つかを挙げましょう。咽がぴりぴりと痛いこと。夜寝るときによく咳に起こされること。昼間の咳は、主に話す時や笑う時に出やすいこと。咳が始まって以来、咽が渇いた時にすごく冷たい水を飲みたがること。それでいて身体は暖かい環境を求めること。毎晩微熱になること。その時、足と手が冷たく感じること。夜ベッドで左下に寝ると胸が痛くて、仰向けに寝ると楽になること。普段は便秘気味なのに、咳が始まって以来下痢気味なこと。職場が来年なくなると知らされた二週間後に咳が始まったこと。小学生の頃、3年間喘息で悩んで、主にステロイド剤で抑えたこと。友達や親戚の悩みを聞くのが好きだけれど、あとから話の内容をすごく気にする性格であること、などなど。
こういう個人的で偶然と思われる偶発症状、そして病気の客観性と関係のない、単なる患者の主観的生活事情や心境は、医者が病気を診断する上で不要な情報なのです。ちょっと哲学的にいえば、従来の西洋医学における病気の診断というのは、個人的な事情や自覚症状から一般的な病名を抽象化していく作業です。主観的な事情や偶発的な症状を切り捨てて、客観的に病気を診断する。この客観化や抽象化の過程で決まった病名に基づいて、医者が薬や処置を決めます。
これに対してホメオパシー治療では、患者が健康を戻すために必要なレメディーを決めるうえで、客観的な病名はあまり役に立ちません。それよりホメオパスが把握したいのは、主観的や個人的事情を含めた病気、いや病気だけではなく、病気で悩んでいる人間全体の調子です。病気になったときの個人的な心身的な調子をできるだけ、細かく知れば知るほど、レメディーが正確に決められるようになるのです。
例えば、病院で細菌性肺炎と診断された人がホメオパシーの診療を受けても、この病名だけでは、その人に必要なレメディーは決まりません。けれども上の例で列挙されていることを聞けば、徐々に必要なレメディーが見えてきます。ホメオパシーはきめこまかに「個人化していく診察」を患者の治療の出発点にしているのです(indivi-dualisierende Untersuchung eines Krankheits-Falles, Organon § 82 と 83)。
抽象化を軸にする西洋医学。個人化を軸にするホメオパシー医学。その違いは、病気の捉え方に帰するものです。ホメオパシーは病気を身体の部分的な故障(肺、皮膚、心臓などだけの病気)と考えないのです。身体の一部が痛んでも、それは、その人の元気を保ち続ける生命力がもつれて、不調な状態に落ちていることの一つの表れとして考えます。痛んでいる身体の部分の背景には、必ず病んでいる、生きた個人の患者がいます。ですから西洋医学の医者とは違い、ホメオパシーの医師は内科、皮膚科、心療内科などの専門医に分かれていません。
それでは、患者の心身状態をまるごとに知るために最も早い方法はなんでしょうか。それは、その人の話を聞くことです。自分が悩んでいる不調、自覚症状、アンバランスを(何らかの病名に診断される前に)一番素直に、そして正直に感じているのは他ならぬ、本人です。ホメオパシーの診療(セッションとも言います)では、ホメオパスが患者と話しながら、本人に個人的な自覚症状や生活環境を語らせて、本人の心境を感じ取っていきます。セッションの目的は、ホメオパスが話し合いを通じて患者本人の心身状態をできるだけまるごと診ることです。
これまでの話でお分かりになると思いますが、医者が患部だけを検査したところで、その検査がどれほど専門的や客観的であろうと、患者本人の調子はあまり見えてきません。最初から患者の「不調」に、限られた数の「病名」を診断しようとする眼鏡で接しても、その人の個人的診療にはなりません。西洋医学の先生達や製薬会社が決めた「病名」という引き出しに当てはめることで終わってしまいます。(続く)
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