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クラシカル・ホメオパシーの特徴 4
—— セルフメディケーションとファミリーホメオパシー ——
自分のために自分でレメディーを選ぶセルフメディケーションや、親が子供や身近な人にレメディーを飲ませるファミリーホメオパシーについて書きたくなった理由は、日本独特とも言えるホメオパシーのスタンスにあります。
というのも、クラシカル・ホメオパシーはその成り立ちや本質から見れば、今主流である西洋医学(近代医学)と対等な医学なのですが、この点について、これまで日本ではほとんど認知されずにきてしまったからです。
ちなみに、西洋化のプロセスで日本で主流になった医学を「西洋医学」と呼ぶこと自体、僕には違和感があります。「西洋由来」という意味だとしても、近代医学には、いまだ西洋以外の国々(例えばアメリカ、日本)の研究者や医者も大いに貢献していますし、ホメオパシー医学も西洋由来医学の一つです。これらの医学を区別しやすくするため、それぞれの基本的な考え方を手がかりにして、「ホメオパシー医学」と「アロパシー医学」という呼び方にしたほうが正確だと思います。その理由や「ホメオパシー」と「アロパシー」という言葉の語源と意味については、簡単に以前のブログで説明しています。(ew-homeopathy.net/blog/918)
前の話に戻りましょう。クラシカル・ホメオパシーは専門性のある医学である。これが、発祥の地ドイツを始めとするヨーロッパ諸国、そしてインドなどのホメオパシー先進国におけるホメオパシーのスタンスです。ところが日本では、素人でも気軽に使える「民間療法」、あるいは「癒し」として理解されています。親が子供にレメディーを飲ませるファミリーホメオパシー、自分が自分のためのレメディーを決めて飲むセルフメディケーション、あるいはペットのためのホメオパシーを、サロン的な集まりや週末セミナーで教えてもらう。日本のホメオパシーは、気軽に使える優しいヒーリングや癒しとして広がっています。この間、日本のホメオパシー事情に詳しい人から「日本ではホメオパシーで治療する医師より、ホメオパシーの獣医のほうが圧倒的に多い」と聞いたのですが、本当でしょうか。いずれにしても、クラシカル・ホメオパシーは元々医学であるという側面が日本で殆ど抜けています。
その大きな理由の一つに、歴史的な成り立ちと伝承にあります。例えばヨーロッパやインドではホメオパシー医学が近代のアロパシー医学より前に発展、伝承され、たくさんの専門医が従事してきました。それによって、ホメオパシー医学は(その発祥時代から賛否両論があるにも関わらず)社会の医療システムの中に専門性のある医学として存在し、その国の医療システムの基礎を支える形で定着してきました。アロパシー医学が盛んになった現在も、同時存在的に社会に根付いています。
現在ドイツでは、ホメオパシーだけで病気を治療する免許医もいれば、部分的に取り入れたり、あるいは全く用いない医師もいます。それは、ホメオパシーが現代医療システムの選択肢のひとつであることを示しています。ドイツなら免許医の並びにたくさんのHeilpraktikerもクラシカル・ホメオパーで医療を行っています。ドイツ特有のHeilpraktiker制度については、以前のブログに紹介しています。(「Heilpraktiker」とは?)
これに対して、日本の場合は全く違います。ホメオパシーが日本に伝わり始めた1980年代には、すでに日本の医療システムは完成し、アロパシー医学が占めていました。そんな状況下で、ホメオパシーが主に医師免許を持たない(医師協会からみれば素人同然の)人たちによってもたらされたのですから、医学として根付きにくいのは当然です。
日本の「保守的」な医師協会に無視される形で民間療法、自然療法、専門知識を持たずに施せる癒しとして定着してしまった日本のホメオパシー。クラシカル・ホメオパシーから見れば、これはホメオパシーのかなり偏った理解です。
クラシカル・ホメオパシーはアロパシー医学と対等な医学です。代替医療というよりも、アロパシー医学とホメオパシー医学を相補的な医学として捉えたほうが、患者のためにもなるはずです。
もちろん、セルフメディケーション、ファミリーホメオパシーや癒しとしてのホメオパシーの存在意義もあります。ホメオパシーの十分な理解や経験があれば、急性、あるいは軽い身体の不調や怪我の場合には、自分でレメディーを決めて飲んだり、子供に飲ませたりすることも歓迎すべきことです。僕のクライアント(患者)も、その気があれば自分でレメディーを使って手当できるようになります。
薬局で花粉症の症状を緩和する薬や風邪薬を買ったり、健康サプリメントを飲んだりすることも、アロパシー医学的なセルフメディケーションやファミリーケアーと言えるでしょう。けれども「これがアロパシー医学(近代医学)だ」と言うと、病院の医者に笑われます。門前の領域しかない。クラシカル・ホメオパシーも同じです。
日本でホメオパシーがファミリーホメオパシーやセルフメディケーションの形で広がってきた背景には、もうひとつ理由があります。ホメオパシーが用いるレメディーに関する誤解です。
「レメディーは自然素材を希釈してつくるため、副作用がなく、たとえ間違って飲んでも問題ない」という人がいます。これは違います。
確かにホメオパシーのレメディーには、アロパシー医学の強い薬によって引き起こされるような副作用はありませんが、間違った処方(合わない種類やポテンシー)が良くない効果をもたらすことがあります。正しく選んだ場合、レメディーには患者の弱った生命力、痛んだ自然治癒力をより良い方向に働かせる力がありますが、処方を誤ったときには、病人の治癒のプロセスをより悪い方向に引っ張る力もあります。適正でないレメディーを処方すれば、かえって患者が苦しんだり、治るまで必要以上に長くかかる可能性があるのです。
何年か前のことですが、咳で苦しんでいる4歳の男の子のことで、相談された事があります。話を聞いてみると、2週間前に風邪に伴う軽い咳を、ちょっと心配性のお母さんがレメディーで治そうとしました。彼女が10種類以上のレメディーを処方しても一向に改善せず、2週間後に軽い肺炎に変わってきたところで、専門のホメオパスの手助けを求めたくなりました。これは、あまりにも過剰なレメディーの投与で悪化したケースとしか考えられません。結局、完全に治るまでに、悪化した時間と同じ2週間を要しました。
軽い怪我や不調のとき、病院で抗生剤、咳止め、解熱剤をもらうより、自分でレメディーによる手当ができれば安心ですし、それ自体はとても良いことです。大事なのは、自分の医術が届く範囲に限度があることを、きちんと自覚しておくことです。
ファミリーホメオパシーやセルフメディケーションの限界、それはホメオパス自身にも言えることです。
じつは去年、私が引っ越しの準備で忙しくしているときに、ちょっとした間違った動きから、ひどいぎっくり腰になってしまいました。立ち上がることもできないし、お手洗いにも行けないし、まるで寝たきり状態で非常に困りました。これまで何回もぎっくり腰の患者さんを診てきましたから、当然、自分のぎっくり腰も自分で治せると思ったのが間違いでした。自分で選んだレメディーを飲んでも、改善のしるしはなし。2日目になって、ドイツにいる僕の主治医に連絡し、レメディーを決めてもらって2時間後、痛い痛いと言いながら、お手洗いに行けるようになりました。
やっぱり、自分のことになると盲点があるのです。そして病気になったとき、大体の場合において原因やきっかけはその死角にあります。逆に言えば、自分が自分の気の病(=病気)の根をはっきりと掴むことができれば、病気になる必要もありません。ちなみに僕の先生も、困ったときは自己治療ではなく、必ず自分の先生にレメディーを処方してもらいます。良い治療のためには、治療を施す側と治療を受ける側に、客観的で冷静な距離感が必要なのです。
ファミリーホメオパシーにも似たような限界があります。親と子供の間、子供と親の間には、いろいろな感情、期待、そのほかにも複雑な力関係が働きます。そんな状況で、お互いを冷静かつ客観的にみることなど、殆んど不可能なのです。子供か親のいずれかが病気になるケースでは、その病気の多くが家族関係に起因することを否定できません。
学校の成績や教育上の眼鏡ばかりで子供を見ている親。子供の全ての要望を満たそうと、気がつかないうちに自分自身を犠牲にしている親。親の介護への責任感から、限界を越えてすっかり疲れ果てている子供。子供の前では平然を装いながら、実際には関係に悩んでいる夫婦などなど。子供や親が病気になると、多くの場合、その病気の原因には家族間にあるちょっと複雑な人間関係が絡んでいます。病人と深い関係にある人は、レメディーの知識がとてもしっかりしていても、その人を治療できないのです。
ちなみに僕も、救急の場合を除き、原則的に身近な人(奥さん、兄弟、親、親友)の治療はしません。そのかわりに、信頼できるクラシカル・ホメオパスを紹介します。
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