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2015.08.23

痛み止めとホメオパシーについて

頭痛、生理痛、歯の痛み、喉の炎症、捻挫した時の痛み、座骨神経痛、発作的偏頭痛、打撲の痛み、手術後の痛み、骨折痛、腰痛、肩こり痛、神経痛、関節痛など。痛みの種類や原因は数えられないほど多くありますが、それに対して人間共通の反応はただ一つ:痛みをすぐ鎮めたい。早く痛みから解放されたい。

とういうわけで、日本では鎮痛剤の市販薬の売り上げが好調です。「14年の解熱鎮痛薬の市場は486億円。4年連続で伸び、4年間で8・5%増えた。同じ期間に市販薬全体の販売は6%減り、ドリンク剤や胃腸薬は1割以上減っているなかで、勢いがある。ここに「高級品」が加わり、さらに市場は広がりそうだ。」(朝日新聞digital、2015年7月11日、PDF)。

この売り上げに大いに貢献したのは、アベノミクスのもとで積極的に奨励されたスイッチOTC薬でした。スイッチOTC薬というのは、「医療用医薬品」が、規制緩和によって「一般用医薬品」に転用(スイッチ)された薬のことを指します。OTCは「カウンター越し、Over The Counter」の意味で、これまで健康保険が効いて、医者の処方箋が必要だった薬を、自分で(そして自分の責任とお金だけで)薬局やドラッグストア、ネットで処方箋が無くても簡単に買えるというものです。

「解熱鎮痛薬の主な買い手は20ー40代の女性という。ドラッグストア大手スギ薬局の仕入れ担当者は『働く女性が増え、会社を休めないからと解熱鎮痛薬を服用する頻度が増えた。高くても良い薬を選ぶ傾向が出ている』と話す」(朝日新聞digital、2015年7月11日)。

忙しい女性がわざわざ仕事を休み、病院に行って長く待たされることなく、欲しい痛み止めを(たとえ終電で帰っても)、駅の近くのドラッグストアで気楽に求められるようになったのですから、さぞ便利だろうと思います。とはいえ、OTC薬を通じてのセルフメディケーションによる薬害や副作用を軽視してはいけません。榮太樓の飴と同じように気軽に手に入るのだから、飴と同じように安全のはず、という心理が働いて、OTC薬剤は全く危なくないという印象を受けやすくなっています。僕の周りの人に聞いてみたところ、ほとんどの人が、OTCで買った鎮痛剤(解熱剤や風邪薬としても使われています)の使用上の注意や説明書を読んだことがありませんでした。

日本で今一番よく売れているOTC鎮痛剤は、効能成分から見ると主に二つのカテゴリーに分かれます。アセトアミノフェン(Paracetamol)を主成分とする鎮痛剤(例えば:ノーシンハッキリエースa)と、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)を主成分とする鎮痛剤(例えば:バファリンイブロキソニン)。両方を同時に含むものもあります(例えば:バファリンルナiバファリンプレミアム)。いうまでもなく、医療用医薬品として病院や医者が処方する鎮痛剤も、ほとんどの場合アセトアミノフェンかNSAIDを主成分とします。(もう一つのカテゴリは主に終末医療に使う麻薬系鎮痛剤、たとえば:モルヒネ、です)

アセトアミノフェン(Paracetamol)の副作用のうち、医療者が一番懸念するのは肝臓障害です。特にアセトアミノフェンの過剰摂取(中毒)による致命的急性肝臓不全。FDA(米食品医薬品局)が発表してきたアセトアミノフェンに関する情報を見ますと、警告や使用制限が年々と厳しくなっています。(HP)

NSAID鎮痛剤を使用した場合、医療者が一番懸念するのは、胃腸出血や潰瘍にまで深刻化する、消化器への負担です。「NSAID潰瘍」は、医療関係者なら、よく知られた診断名です。(PDF

それに加えてFDAは今年の7月、NSAID解熱鎮痛剤における他の危ない副作用についても、(アセチルサリチル酸(アスピリン)を除く)表記を強化することを公表しました。「心臓発作や脳卒中のリスクを高める可能性がある」という副作用は、すでに2005年からNSAIDの使用上の注意書きに書かなければなりませんでしたが、そのリスクはこれから「可能性」としてではなく、「事実」として記入しなければならないことになりました。

「NSAIDs may increase the chance of a heart attack or stroke that can lead to death」(NSAID が死に至り得る心臓発作や脳卒中になるリスクの可能性を高める)から「NSAIDs increase the chance of a heart attack or stroke, either of which can lead to death」(NSAID が死に至り得る心臓発作や脳卒中になるリスクを高める)へ。(HPPDF)

日本では、解熱鎮痛剤の売上増加の一途にも関わらず、新聞や厚生省の情報サイトには、この警告強化について、これまで掲載されていないようです。

うちに相談しに来る患者さんに対して、僕はこういう鎮痛剤を使わないほうがいいと積極的にお勧めします。だからと言って、我慢しろ、痛みに耐えてくださいとは言いません。なぜなら、ホメオパシーのレメディーで痛みを速効的に和らげることができるからです。そして痛みの原因もきちんと治療できます。

痛みは体が鳴らしている警告です。「体の中で何かが病んでいる、壊れている。何かが普通に働いていない、早く治してください。何かがおかしい、気をつけてください」と伝えてくれる非常信号です。痛み止めを飲むと、痛みの原因は治りません。痛みを(麻酔と似たように)感じられなくするだけです。痛みを長くこういう形で抑えると、痛みの原因が悪化や慢性化する可能性があります。飛行中、操作盤に赤い警報灯が点滅したところで、そのランプを無理矢理引き抜いて、「これでようやく安全にフライトが続けられる」と自分に言い聞かせているパイロットに似ています。

なぜかわかりませんが、ホメオパシーによって痛みの治療ができるということを知っている人が少ないみたいです。ホメオパシーは主に時間をかけて体調改善を通じて、慢性的な病気や不調の治療を得意とする治療法なので、即効性を必要とする痛み治療や緩和治療に向かないというイメージが定着したのかもしれません。実際はまるで違います。急に生じた痛み、特にきつい痛みに対し、ホメオパシーは即効性を発揮します。ただし、正しいレメディーを処方した場合に限ります。

苦しむ人を楽にさせる、痛みを早く鎮めるレメディーを見つけるには、できるだけたくさんの情報を必要としています。急性の場合には、電話で連絡してもらい、痛みの様相を教えてもらうが一般的なのやり方です。その痛みがいつに始まったか。痛くなったきっかけは何だったか。痛みをどのように感じるか。なにをして、どんな状況で、どんな姿勢で悪化するか、あるいは楽になるか。精神状態や気分は?痛みで苦しんでいる本人の全体の調子や、痛みの具体的な様相を把握すればするほど、患者にぴったりのレメディーが見えてきます。

もちろん経験豊かなホメオパスであっても、最初の電話ですぐにぴったり合うレメディーが見つからないこともあります。なせかというと、痛みから一刻も早く逃れて楽になりたい患者と、その気持ちにできるだけ応えたいホメオパスの間に、焦りが生じやすいからです。焦りに影響されると、冷静に必要な情報を得るのが時々難しくなります。お勧めのレメディーを飲んでも、痛みがすぐに、あるいは十分に引かない場合、しばらく経ってから、電話でもう一度患者さんから痛みの様相を聞かせてもらいます。こういうやり取りを繰り返すことが時々必要ですが、正しいレメディーが見つかった時の痛みの鎮まり方や引き方は、(多くの場合)びっくりするほど早くて、そして持続的です。ホメオパシーのレメディーは痛みに効くというより、痛みで苦しんでいる人まるごとの治癒力を応援しますので、痛みの原因の治癒にも効くのです。