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2018.07.19

花粉症について。(3)花粉症の個人的発症と治療

さて、前回のブログでは、花粉症やアレルギーの疫病的な普及の背景にある、二つの大きな原因として、近代的な生活により人体と共生する細菌が減少していること、そして人の免疫成長を十分配慮しない、近代医学の過剰な化学治療を取り上げました。近代生活や医学のおかげで、アレルギー疾患が一般的に増えつつある。

そうはいっても、どうしてある人は花粉症になり、ある人は花粉症にならないのでしょう?同じ家族環境で育ち、似た予防接種や医療を受けた兄弟をみても、花粉になる人とならない人がいます。若い頃から花粉症に悩む人もいれば、ある年齢になって初めて花粉症になる人もいます。長く花粉症に悩んだのに、ある年から悩まなくなる人もいます。「過剰衛生」や「過剰医療」のおかげで、われわれ現代人が一般的にアレルギーにかかりやすくなっていると理解しているとはいえ、なぜ、その人が、人生のちょうどその時に、花粉症を発症するのでしょう?時代背景や社会環境に起因する一般的な有病率ではなく、実際にアレルギーを発症させる、個人的なきかっけや原因はなんでしょうか?

もちろん、個人的なきっかけは、ケースバイケースに丁寧に診て探る他ありません。僕が花粉症や他のアレルギーを診てきた臨床経験からみて、一般的に述べると、おおよそこういうことが言えます。それは多くの場合、花粉症が人生の節目の時、自分の生活環境が大きく変わったときに発症しやすい、ということです。

社会人になった時。進学した時。引っ越したとき。海外から日本に帰った時、あるいは逆。お母さんになった時。結婚(離婚)した時、などなど。人間の成長と伴う、人生の節目の時に、アレルギーが始まるケースが、比較的多いのです。

人生の節目では、生活環境や社会環境、人間関係、責任などが大きく変わります。その変化に(自分なりのスピードや容量で)対応しながら、人は成長します。お母さんになった時、学生になった時、新入社員になった時、新しい役割や生活環境がもたらす、新しい課題や条件をたくさん受け入れなければなりません。言い換えれば、人生の節目の時に、自分の健全な成長にとって、何が良く、何が悪いのか、心はその都度、繰り返しこの問いに向き合っています。そして自分にとっていい、自分にとって悪いものをきちんと感じながら選別し、その感覚を現実的に行動に移す、形に変えるエネルギーが必要です。言い換えれば、人間は、免疫系のレベルだけではなく、心の次元についても、絶えず自分にとって良い、悪い、を選別しながら生きているのです。けれども(誰でも経験したことがあると思いますが)、その選別がいつもすぐうまくできるとは限りません。外的プレシャーや条件で選別が不可能、もしくは難しくなる時がありますし、選択の自由がもとよりない状況もあります。場合によっては自分の心の根底に潜む、ある深い混乱のために選別できない場合もあります。

特に人生の節目といえば、選別が複雑になりやすい時です。自分の喜ばしい成長のために、新しい状況に慣れなければならないと思っても、スムーズに馴染めない,上手に適応できない、受け入れるために、かなりの無理をしなければならないこともたくさんあります。実は、こうした状況のなかで、本人も気づかないうちに、ずっと心の中で無理し続けてしまうことがあります。外から見れば、「喜ばしく、誇らしい」という出来事であるがために、本人も、その周りに居る人たちも、本人が無理していることに気がつかない(そう思いたくない)のです。そのため、適切な対応を施したり、無理そのものをほぐすこともできません。こういう状況が長く続くと、人は心の奥底に自分の人生や生き方に対して非常に過敏になります。

この過敏さの原因や対象は、人によって違います。仕事場の新しい役目で生じた、より重たい責任。お父さんになったときに増えた責任や経済的負担。保育園に入った時のお母さんとの間の新たな距離。会社勤めを始めた時の長い通勤時間。愛情にかけている夫婦関係。結婚相手の存在感が強すぎて、自分のテリトリーを十分に守れないこと。中学校に入った時の試験のプレッシャー。進学競争や親の期待に耐えられない不安。新しい学校の授業のつまらなさ。小学校に入った時に初めて経験する複雑な人間関係。開放的な田舎から都会に引っ越した時の自然の少ない、有害物の多い環境。自分のニーズや要求を認めない親の元で育つ子供の絶望感。新しいことを始める時に、何の失敗も許さない、自分に厳しい完璧主義。出産、育児で忙しくなり、好きな仕事を続けられないお母さんの虚しさ。転勤後の新しい職場の、あまりにも権威的で、厳しい上下関係。長年の親の介護に由来する深い疲れ、などなど。

花粉症や他のアレルギーを発症したきっかけや理由は、個人によって違いますが、多くの場合は、身体の過敏症やアレルギーの背景には、上記のような、心の奥底に潜む、自分の生き方、生活環境に関する、精神的な過敏が関係しています。

ブログの最後に、毎年に花粉症に悩んでいる人のために、いいニュースがあります。花粉症とのつき合い方は、通常、先般述べた2つの方法(花粉の症状を我慢する。あるいは強い薬ーステロイドや抗ヒスタミン剤で抑える。)に加えて、もう一つの選択があります。ホメオパシーでの治療です。世界中のプロフェッショナル・ホメオパスたちは、花粉症の治療について、非常に多くの実績や臨床経験があります。ホメオパシーによる花粉症の治療は、ほとんどの場合、2つのケアを同時に行います。ひとつは、花粉が飛ぶ時に、その具体的な症状を、素早かにほとんど気にならない程度まで和らげるケア。もう一つは、少し気長なスタンスで取り組む、ホメオパシーによる基本的な体質改善や心身向上の治療ケアです。花粉症は慢性疾患ですから、アレルギー体質が治るまでは時間がかかります。それでも、ホメオパシーによって、ほとんど自分でも気づかないうちに自分の過敏症を治した人がたくさんいます。