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2020.09.30

閉じ込めるのが不可能なインフルエンザウイルスと、 閉じ込めなければならない新型コロナウイルス

コロナ展望録。その5

新型コロナウイルスおよび Covid-19 と、インフルエンザウイルスおよびインフルエンザの一番大きな違いは、ウイルス側にあるではなく、全世界がこの二つのウイルスに対してどのように反応しているか、にあるように見えます。喜んでインフルエンザに罹る人を僕は知りませんが、それでもインフルエンザウイルスは基本的に人類との共存が許されています。インフルエンザの季節になると、みなそれぞれ個人的に必要と思う程度に予防しながら、そして罹った時には休んだり、もしくは医療の力を借りながら病気を治します。それに対して、新型コロナウイルスは「悪」として扱われ、嫌われ、恐ろしがられています。ほぼ全世界がこのウイルスを鎮圧するための「戦い」や「戦争」を始めました。特に3月と4月には、このような形で宣戦布告を発した政治家や機関がたくさんありました。その中で大きな影響を及ぼしたのは、WHOのインフルエンザウイルスと新型コロナウイルスの違いについての3月3日の発言です。

「季節インフルエンザに対しては、世界中の多くの人がすでに免疫を作り上げましたが、Covid-19は新しいウイルスであるため、誰も免疫を持っていません。つまり、インフルエンザよりたくさんの人が感染し、そして一部の人は重症になるでしょう。…… 季節インフルエンザの場合、封じ込めという言葉さえも使いません。インフルエンザを封じ込めるのは不可能です。ただし、COVID-19は可能です。季節インフルエンザの場合に、我々が接触追跡(コンタクト・トレーシング)を行いませんが、COVID-19の場合、感染を防ぐ、そして命を救うため、国々は接触追跡を行うべきです。何故なら、封じ込めることが可能だからです。….. というわけで、封じ込めるために、できる全てのことを実行しなければなりません。」
(While many people globally have built up immunity to seasonal flu strains, COVID-19 is a new virus to which no one has immunity. That means more people are susceptible to infection, and some will suffer severe disease. … we don’t even talk about containment for seasonal flu – it’s just not possible. But it is possible for COVID-19. We don’t do contact tracing for seasonal flu – but countries should do it for COVID-19, because it will prevent infections and save lives. Containment is possible. …it can be contained – which is why we must do everything we can to contain it.)(WHO Director-General's opening remarks at the media briefing on COVID-19 - 3 March 2020

なぜ、インフルエンザを封じ込めるのが不可能なのでしょうか。インルエンザの場合、大部分の感染者が無症状で、自分が感染したという自覚がなく、多くの場合、インフルエンザウイルスは病気を引き起こさずに広がり、その流行と拡大は現実的にコントロールできません。

「普通のインフルエンザの場合は、毎冬平均的に、予防接種を受けていない人口の18%が感染する。感染したケースのうち、75%は全く症状を示しない。残りの25%はPCR法によって検証されたインフルエンザの症状を示す。その25%のうちの17%は、医学的な治療を必要とする病状になる。季節インフルエンザとパンデミックインフルエンザを比べても大きく変わらない。」
(On average influenza infected 18% of unvaccinated people each winter. Up to three-quarters of infections were asymptomatic and about a quarter of infections had PCR-confirmed disease. 17% of people with PCR-confirmed disease had medically attended illness. These data did not vary significantly when comparing pandemic with seasonal influenza. )(PDFPDF

もっと分かりやすく言うと、インフルエンザが流行る時期に、予防接種を受けていない100人のグループの中で、平均的に18人がインフルエンザウイルに感染する。その18人のうち、13−14人は自覚症状がありません。残りの4-5人は、発病して症状がありますが、医者の治療が必要になるほど重たい病状になるのは1人だけです。

感染しても病気にならない人の割合が75%ということは、少なくとも人口のの75%は、インフルエンザウイルスに対する十分な免疫力があるとのことを意味しています。そのため、インフルエンザウイルスは気つかれずに、見つからずに、忍びやかに広がります。これほど無症状的感染が多い感染病を封じ込めるのは不可能です。

では、Covid-19の新型コロナウイルスは、どのように広がるのでしょうか?無症状の感染者がどれぐらいいるのか ー 当然、パンデミックの初期段階で、そういうことを確実に把握することは困難です。上に引用した3月3日の発言では、WHOは曖昧に「中国からのエビデンス」を引用して「報告した感染のケースの中でただ1%は無症状だ」と発表しています。

幸運にも、時間が経つにつれて、このWHOの発言が大いに間違っていることが明らかになりました。日本の国立感染症研究所がWHOの発言の2週間前に公開した、ダイアモンドプリンセス号の感染状況についての調査によれば、重症化しやすい70代と80代の年寄りの感染者の中でさえ、50%以上は無症状でした(PDF)。そして割合早いうちに公開された、中国におけるCovid-19の拡大を調べたいくつかの研究によりますと、おそらく80%以上の感染ケースは、軽症ないし無症状で終わっています(PDFPDFPDFPDF)。6月の時点から、新型コロナウイルスに感染しても、80%以上の感染者はこの感染を無症状、ないしは「疾病」という感覚にならない程度の軽い症状で乗り越えるということが、かなり確実になりました。(PDF

6月の終わりには、アメリカのCDCは同じ結論に達します。「現時点での我々の一番妥当な推測は、報告された1件のケースに、実際には他に10人の感染者がいるということです」(Our best estimate right now is that for every case that's reported, there actually are 10 other infections.)(PDF)最近は似たような推測や結論に至る研究が早いペースで増えっています。9月21日に発表された日本の研究者の検査によりますと、「COVID-19の感染は、致死率が非常に低いにもかかわらず、東京の一般人口に広く広がっている可能性があります。….. 集団免疫が成立している可能性があります。」(PDF

つまり、新型コロナウイルスは、季節インフレンザウイルスとよく似た割合で、無症状で終わる感染が大部分です。言い換えると、季節インフルエンザと似て、世界中の多くの人が、すでに新型コロナウイルス免疫を作り上げたために、新型コロナウイルスも気つかれずに、見つからずに、忍びやかに広がっています。そのためインフルエンザウイルスと同様、新型コロナウイルスを封じ込めるのは不可能なのです。

ですから最近、新聞でよく目にする「コロナウイルス感染拡大止まらず」は悪いニュースではなく、実は非常にほっとできるニュースです。世界中の8割以上の人間は新型コロナウイルスに対する十分な免疫力を持っているということを意味しているのですから。(コロナウィルスと免疫系については、近いうちにもっと詳しく書きます。)

2月の終わりと比べて、現在のデータとエビデンス、そしてコロナに対する知識が大きく変化したにも関わらず、世界保健機関は、「新型コロナウイルスを閉じ込めなければならない」という発言を(僕の知る限り)これまで撤回していません。そして今もなお、ビル・ゲイツは地球の全人口の予防接種を唯一の解決方法として宣伝するため、2月の終わりからずっと、Covid-19の脅威を強調しながら、その「全滅」(elimination)を訴えています。(PDF

その考え方の延長線にあるかのように、世界中の多くの政治家は、未だに新コロナウイルスを封じ込め、鎮圧するための「戦争」や「戦い」を宣伝し続けていますし、感染すること自体が、あたかも社会悪、ないしは社会的犯罪だというような生活環境と雰囲気を作り続けています。

その戦争に参戦するかのように、マスメディアは相変わらず、主にCovid-19の戦々恐々とした情報を普及させ、たくさんの人を過剰な不安に落とし入れています。新型コロナウイルスのような、無症状の感染者がこれほど多い感染病の場合、病気になってもいない(=発症していない)のに、単にPCRで探し出した陽性のケースをすべて数え、それを毎日報告し、そして問題化するのは滑稽としか言いようがありません。

人間にとって、戦争を始めるのは大変容易いことのようですが、メンツを傷つけることなく戦争を終わらせる知恵や手法は、なかなかないようです。特にもう勝つことができない、不要な戦争なら尚更のことです。その場合、プロパガンダの一部として、その敵を「危ない」「恐ろしい」と描き続けるしかないことは、歴史を振り返っても明らかです。

世界中の人が冷静さや落ち着きを失い、新型コロナウイルスに対しての不安症やコロナ禍の広がりと深刻化を引き起こした背景には、3月のイタリア北部のCovid-19の発生とその報道が、非常に大きな影響を及ばしました。次回のブログでは、イタリア北部で起こった医療危機をクローズアップしながら、新型コロナウイルスの危なさについて考えます。