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新型ワクチンの有効率について
コロナ展望録。その12
新型コロナワクチンは、90%以上の有効率をもつワクチンとして、もてはやされています。この数字を聞いたほとんどの人が、ワクチンを打てばCovid-19という病気にかかる可能性が90%低くなる、と思っているようです。残念ながらそれは大きな誤解です。「有効率90%以上」というのは、何を意味するのか?新型ワクチンの有効率について検討していきましょう。少し統計的な分析になりますが、この苦労は報われますので、頭をシャープにして最後まで読み進めてみてください。
ここでは、日本で提供されるワクチンについて発表された有効率と近い数字を出している、ファイザー社提供の試験データを手がかりに考えます。(PDF/ページ13、PDF/ページ2612)
ワクチンの有効性を証明するために、ファイザー社は以下のような実験を行いました。実験参加者を、ワクチンを投与するグループとプラセボを与えるグループに半分づつ分けます。ワクチンの集団には3週間のあけてワクチンを2回打ち、プラセボの集団には、プラセボとなる何も入っていない塩水を同様に2回に打ちました。2ヵ月後、この二つのグループにおいて何人がCovid-19の症状を示したか、そして陽性と判明したのかを調べます。ワクチンの集団では、18,556人中8人で、プラセボの集団では18,530人中162人でした。8人と162人という数字を比べると、8は162より95.1% 少ないですので、ワクチンによって病気になった人が95.1%減少したと見なされます。これにより、有効率が 95.1%となる素晴らしいワクチンが開発できたと宣伝します。
この数字は、二つのグループで実験期間に病気になった人数の相対的な割合によって算出されますので、「相対リスク減少率」(RRR, relative risk reduction)と言います。製薬会社が新薬の認証過程に好んで使う指標です。なぜかというとほとんどの場合、RRRの数字は薬の有効率を非常に高く、よりよく見せる数字だからです。ただし、RRRが示すリスク減少率は、私たち一人一人が実際に病気になるリスクの減少率とは違っています。いち個人が現実的な生活において実際に病気にかかるリスクの減少率は「絶対リスク減少率」(ARR, absolute risk reduction)として計算します。ある薬やワクチンの有効率を、より現実的に、正直に示す数字です。
ファイザーのワクチンのARRを計算してみましょう。プラセボの集団では、一人が病気にかかるリスクが(18,530人の中162人=) 0.87%です。ワクチンを打った集団では、同じリスクが(18,556人の中8人=)0.04%です。従って、個人がワクチン接種によって得ることのできる本当のリスク減少率は0.83% です(0.87 - 0.04 = 0.83)。ワクチンを打った人とワクチンを打っていない人とを比べると、病気になる可能性が 0.83% 減ったということになります。
0.83%の有効率をはじき出す計算と、95.1%の有効率をはじき出す計算。その違いはどこから生じるのでしょうか?その決定的な理由は、新型コロナウイルスが、あまり危なくない、感染力の弱いウイルスだというところにあります。
よりわかりやすくするため、新型コロナウイルスよりも感染力の強い、危険な感染病の場合を仮に想定してみましょう。ワクチン集団は 18,556人、プラセボ集団は 18,530人。実験終了時に、プラセボグループは(感染力の強いウイルスであるため)その半数の9,265人が病気になり、ワクチングループでは、うち 454人しか病気になっていないと仮定します。454人は9,265人と比べて、95.1%少ないですので、ワクチンによる相対危険度減少(RRR)は、(上記のファイザー試験と同様に)95.1%です。しかし、一人一人が実際に病気になる可能性、その絶対的リスクはワクチンによって、はっきりと下がっています。プラセボグループの感染リスクは50%(18,530人の中9,265人)で、ワクチン集団の感染リスクは2.4%(18,556人の中454人)です。50% - 2.4%で、ワクチン接種によって、病気になるリスクは47.6%減りました。絶対リスク減少率(ARR)は47.6%です。
ファイザーの新型コロナワクチンの試験、そしていま我々が仮定した試験では、両方の RRR は一緒なのに、ARR は60倍以上違います。その違いはどこからくるのでしょうか?答えは簡単です。ウイルスの感染力と危険度の差によるものです。新型コロナウイルスは、18,530人中、僅か162人(=0.71%)しか病気の症状を示さない、人間にとって感染力が低い病原体です。ワクチンを打っても、打たなくても、病気になるリスクはそれほど変わりません。逆に、我々が仮定した感染病の場合のように、参加者の半数を病気にするような感染力の強い病原体の場合、ワクチン接種によってその病原体に対する特異免疫が少しでも上がれば、それなりのリスク減少になります。
絶対リスク減少率は、病原体の感染力とそれに対する人口全体の免疫力を考慮した、より現実的な数字ですので、ワクチンの質と効能をよりリアルに教えてくれる値です。残念ながら、製薬会社と製薬会社のいいなりになりがちな政治家や研究者は、現実的な生活においてはあまり意味を成さない、相対リスク減少率を主に利用しています。これは、薬やワクチンの効果を過剰に良く見せるための手品です。(この問題について、Lancet Microbe で掲載された解説を参照。PDF)
新型ワクチンの有効性について考えるべき、もう一つの分析があります。ワクチンを打った集団の中で病気になった人は、プラセボの集団と比べて154人少なかった。つまり、154人の病気を避けるために18,556人にワクチン接種をしなければならない計算になります。1人が病気ならないために、ワクチンなしでも病気にならない121人に接種しなければならないのです。言い換えると、このワクチン接種はとんでもなく効率が悪いということになります。121人が飲んで1人しか頭痛が治らないような薬を、誰が買いたいでしょうか?
ちなみにこの121という数字、一人が治療の恩恵を受けるために処置しなければならない人数のことを、専門用語で「治療必要数」(NNT, number needed to treat)と言います。先ほど仮定的に立てた、感染力の強いウイルスの場合のNNTは 2(二人)です。一人の病気を避けるためため、二人の接種が必要です。
副反応やワクチン被害のリスクが全くないのなら、それはただファイザー社のワクチンの効率がとても悪いという話にとどまるのかもしれません。でも、ワクチンは人によって短期的または長期的な有害事象や健康被害を起こす可能性があります。もともとワクチンを接種せずとも元気でいられる121人が、こうした不要なワクチン接種による薬害の可能性に晒されるデメリットと、たった一人が病気にならないというメリットを比較検討する必要もあります。
統計的な計算の多いブログですので、読みやすくするため、数字の部分だけを PDF でまとめました。どうぞ、ダウンロードして、自由に使ってください。
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