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コレステロール神話の崩壊(前回のブログを参照)は、日本より海外のほうが進んでいます。日本にもコレステロール低下の医療的必要性を批判する専門家は増えていますが、その声や研究発表は(昔の反原発の研究者や運動家とよく似たように)まだメインストリームの医療、患者と医者の常識には届いていません。もっと興味のある人のために、このブログに日本語の資料編を載せます。親戚や知り合いでコレステロール値低下のためにスタチン薬剤を飲む人がいれば、この情報を教えてあげて下さい。どうぞご自由に活用ください。 「スタチン、心臓病予防に有効なの?学会調査では効果なし」(PDF) という見出しで、朝日新聞は2014年9月に脂質栄養学会理事の奥山治美氏の調査結果を紹介しました。奥山治美氏は、1990 - 2008年までに行われたスタチン剤の効果を確かめるため、16件の臨床研究を調べました。それによりますと、「効果なし」という結論に至った研究は、全て製薬会社から完全に自立している研究グループによって行われた一方、「効果あり」と発表した研究プロジェクト

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福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、日本人の「現代の神話」に対する意識は、随分と敏感になりました。原子力のメリットとデメリットについて、他国では盛んな討論が行われましたが、日本では、問題を指摘する研究者や技術者がいながらも、莫大なお金を動かす「原子力村」が原発の色々な問題点(放射能の危険性、使用済み核燃料の保管、原発の経済性など)について、ディスカッションが国内に広がらないように動きました。その結果、「原発は安全で経済的だから、特に問題にしなくて良い」と言う神話(メルヘン、または嘘といっても良い)が多くの日本人の意識に刷り込まれてしまいました。 電力業界と同じく、莫大なお金が動いている医療の世界にも、この類の神話はたくさんありますが、多くの場合、医療に於ける神話の有効期限は、原子力神話と同様に、欧米より日本の方がうんと長いようです。ヨーロッパやアメリカで、長らく(ときに何十年間も)医療関係者の間で常識とされていた神話が経験や新しい研究によって崩壊しつつあっても、日本の医療では、なお根強く生き続けているケースがあります。そのひとつが「コレステロールの低下の意味と必要性」の物語です。

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6月のブログで、ドイツのハイルプラクティカ(Heilpraktiker)という職名の意味と法的立場を説明しました。「Heilpraktiker」というのは、「医術従事免許」を持つ「医術従事者」のことです。ドイツでは、ホメオパシー医療を開業するために、この免許が必要です。このブログを読んだ人から、「ドイツではホメオパシー治療を受けた場合に健康保険で払えますか」と聞かれました。そこで、今回はドイツにおける健康保険とホメオパシーの関係を話しましょう。余談ですが、僕はかねがね、日本語の「健康保険」や英語の「health insurance」という呼び方が不思議なんです。健康というものは家財や車のように保険をかけられるようなものでしょうか?健康に保険をかけると、病気は避けられるのか?なんとなく、頭のいい広告代理店が考えた呼び方に聞こえてしまうのです。損害保険と同様、健康に損害

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医療費と経営学のヒント
簡単な例で考えてみましょうか。タイムマシンに乗って僕が中学生になったとしましょう。その僕が自分のお小遣いで、一週間分の家族のおやつを買ってきたとします。翌週もまた、同じように同じスーパーで家族のおやつを買いに行きますが、今度はお母さんが彼女の財布を持たしてくれました。さて、僕がおやつに使う出費はどちらの週が高いと思いますか。
誰でも自分の財布から払わなければならない場合、その出費を出来るだけ節約するような関心が自然に、かつ強く湧いてきます。僕だって同じです。それが経営学のコモンセンスの一つ。残念ながら、この単純な知恵が現代の医療制度にあまり生かされていないように思います。

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高齢化(前掲載を参照)に加えて、医療費増加のもう一つ大きな原因として、「医療技術の高度化」や「医療技術の進歩」が挙げられています。大切なのは、この言葉を文字通りに理解することです。医療の進歩と高度化の話ではないんですね。医療技術の進歩の話です。常識で考えれば、どんな分野でも、より高度な技術がより良い結果をもたらします。それが進歩というものです。医学の分野で言えば、医療技術の高度化や進歩によって、医療の質、もっとわかりやすくいえば、「治療」の質がよくなるはずです。治療の質が良くなるということは、病気がより早く、より確かに治るということです。病気が(これまでと比べれば)より早く、より確かに治れば、その治療に使う医療技術がちょっと高くなっても、その結果として、効率が良くなり、最終的にコストが高くなるはずがありません。

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9月の終わりに日本の厚生労働省が2010年度の国民医療費を発表しました。(厚労省のHPを参照)過去最高の34.8兆円に上ったそうです。1989年度(平成元年)の19.7兆円と比べれば、21年で75%増えました。全人口の一人当たり、27万2600円になります。日本の国民所得に占める国民医療費の割合も過去最高の9.90%に上昇しました。(図)国民医療費と対国民所得比の年次推移(厚労省のHPより)他の生活費の増加に比べ、余りにもかけ離れた、止めようがないようにみえる医療費の膨らみ方の背景として、以下の原因がよく挙げられています。
高齢化に加え医療技術の高度化が進んだ影響が大きいという。
(朝日新聞)
高齢化や診療報酬の引き上げ、医療技術の高度化が主な要因。
(時事通信)
高齢化が進んだほか、医療技術の進歩を受けて治療費が膨らんでいることが主因。(毎日新聞)

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