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●● からだの声が聞こえない

自分の身体の声を聞く。子供にとっては特に学んだ記憶もないような、自然に与えられている単純な能力ですが、大人になった途端、得てして難しくなることが多いものです。

このごろの教育システムでは、多くの人が、自分の五感で感じることより、活字やテレビ、ネットなどのメディアによって提供、配布される情報を信じるように育てられています。経験や感受性より、知識や情報を優先する現代社会において、病気になった時に突然、「身体の声を聞く」と言われても簡単ではないのは当然です。そのときの自分の感覚を信じて従うよりは、頭にインプットされている常識的な知識やマニュアル、あるいはどこかで見聞きした一般的なアドバイスに従う方が安心です。それが権威ある専門家のアドバイスとなれば、大多数の人は自分の感性など顧みず、勧められた方向に走りがちになります。とはいえ、早く元気になりたかったら、自分の感覚、もっと大きくいえば自分の主体性や個人性を大事にする必要があります。体調の崩し方も自然治癒力の働きも人によって違います。ですから自分の感覚を信じ、体の声に従って飲んだり食べたりするのは、たとえ常

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「早く元気になるため、病気にならないために、どんな食生活やダイエットがお勧めですか。」と聞かれることがあります。簡単な質問のように見えますが、そう単純に答えられません。なぜなら、その人にあった健康的な食生活は、その人の中に見出すもので、一般的なガイドラインはあてにならないと僕は確信するからです。100人いれば、100通りの健康的な食生活があります。万人に効くダイエット、といった類の話は、どれほど優れた専門家たちが勧めようとも僕は眉間に皺を寄せます。医食同源という言葉が示すように、健康と食生活は深く繋がっていますが、そのつながりは極めて個人的で多様なのです。
●● 食の好き嫌いとレメディーの選び方
ホメオパシーの診察では、必ず患者の食生活についても話します。その目的は、患者に健康的なダイエットを勧めるためではなく、飲食に関する本人の好き嫌いや習慣を理解するためです。

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ホメオパシーと感染病
「風邪を引いたみたいです。」冬が近づくと、風邪で連絡をくださるクライアントが増えます。何があって風邪を引いたかと聞くと、だいたい次のようの答えが来ます。「家内が二日前から風邪を引いていて、それが移りました。」「学校で熱っぽい風邪が流行っているので、それが移っちゃった。」「一昨日すごく混んでいる電車で、咳を込む人がたくさんいて、ここでもらったと思う。」 何かが悪くなった時、先ずはじめに、人がその原因を自分と関係のないところに見いだそうとするのは、東西問わず万国共通のようです。悪いものはいつも外から来る。自分の不幸の原因は向こうにあります。この考え方の延長線で、強い風邪を引いた人は、まるで悪者のように周囲から避けられるのです。「近づかないで下さい。」「治るまで保育園を休ませて下さい。」もしくは本人自ら、あまり人の前に出ないようにしたり、大きなマスクを付けるようにします。

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「ホメオパシーを救急治療に使う病院の実例がありますか?」前回、ホメオパシーと救急医療について書いたところ、ブログの読者からこのような質問を頂きました。日本ではそういう病院の話は未だ聞いていませんが、オーストリアやインドには、救急医療にホメオパシーを併用し、その臨床経験や成果を本にまとめている医者がいます。もっと知りたい人のために、ここで二冊の本を紹介します。

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ホメオパシーを積極的に利用する人なら、日常生活で生じる傷や怪我(切り傷、削り傷、打撲、化膿、出血、火傷など)に対する、レメディーの即効性を良くご存知のことと思います。しかし大抵の場合は、救急医学におけるホメオパシーの使用について話すと、「救急手当にも効くんですか?」とびっくりされます。近代アロパシー医学と違い、ホメオパシーは診察や治療に高価で高性能な機械を使わないからでしょうか。ホメオパシーの得意分野というと、どちらかと言えば「時間をかけて治さなければならない基礎的な体調」や「生き方の改善を必要とする慢性病、難病」「こころの病」という印象になりがちです。話し合いによるセッションを通じて、必要なレメディーを処方するイメージが定着しているために、セッションが不可能な救急現場でもホメオパシーが有効だとは、想像がつかないのでしょう。実際、日本の医療システムの中では、未だ病院の治療と平行してホメオパシーを使う例が殆どないため、ホメオパシーの臨床的な役割と実績はあまり知られていません。けれども、ドイツや他国の臨床例を見ても、これはホメオパシーの偏ったイメージです。そこで今回は、近代先端医学の正

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今年9月にベルリンに滞在したとき、一日遠足で、旧東ドイツにあるケーテン(Köthen)という街を訪ねました。ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)が1717ー1723年に宮廷楽長を勤めたことから、日本のクラシック音楽のファンにも良く知られ、日本人の観光客も多い街です。あまり知られていないのは、バッハのおよそ100年後に、ホメオパシーの設立者、サムエル・ハーネマンが1821年から1835年までケーテンに住んでいたことです。引っ越しの非常に多い人生(20回以上!)の中、いちばん長く一カ所に住んでいたのは、ケーテンでの15年間でした。日々の忙しい診療の傍ら、ホメオパシーの研究を続けながら、「慢性病」(Die chronischen Krankheiten )の5巻、そしてオルガノンの第3、4、5改正版を出版しました。

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ホメオパシーは医学ですか、それともカウンセリングですか」という質問を日本ではよく受けます。ホメオパスは患者の調子を把握するため、病院とは違い、検査機器を使わずセッションで患者の話を聞きながら、診療を進めます。そのためか、ホメオパシーに不慣れな日本では、ホメオパシーは「医学というよりカウンセリング的なセラピー」、言い換えれば「主にこころの病を得意とする治療法」という印象になりやすいのです。医学なのか。カウンセリングなのか。この質問に答える前に、ちょっと哲学のお話をしましょう。個人の「こころ」をテーマにするカウンセリングと、人間の「身体」を処置する医学とは、別のものだという考え方は、こころ(精神)と身体(物体、物質)をきちんと分けることができるというものの見方を前提しています。哲学的に言えば、こころ(精神)と身体(物体)の二元論的な発想に由来するものです。この考え方を初めて明確に確立したのは、およそ400年前の哲学者、レネ・デカルト(Rene Descartes, 1596-1650)です。そして、この「こころ」と「身体」を分裂する考え方によって、存在しているあらゆるものを(何の気

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