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2023.12.21

ついでに

世界的に注目を浴びるドイツのテレビドラマはあまりありません。近年の大きな例外は、『バビロン・ベルリン』(Babylon Berlin)という歴史スリラードラマです。第一次、第二次世界大戦のの間のベルリンを舞台にしながら、庶民から上流階級までにわたる人々の生活や、人生の明暗を鮮やかに描くシリーズです。2017年にシリーズ1を公開して以来、世界的に人気を浴び、現在はシリーズ5を手掛けています。『バビロン・ベルリン』がヒットした理由は、スリリングなストーリー、俳優たちの演技などとは別に、莫大な製作費をかけた、非常に鮮やかでリアルに描かれている人物の衣装と街風景です。友達に勧められて、僕も最近このシリーズを楽しみました。当時の街並みを忠実に再現しているセットで、ホメオパシーのレメディーを扱う薬局も出てきます。当時、アロパシー医学の薬とホメオパシー医学のレメディーがどれほど同じ目線の高さで扱われていたかを鮮やかに見せています。

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ハーネマンと同時代の哲学者、イマヌエル・カント(Immanuel Kant、1724 - 1804)の(もしかしたら一番)有名な論文の中にも、肝心なところで「Sapere aude」というアピールが出てきます。ハーネマン本人はおそらく、カントのこの論文を暗に示すため、「Aude sapere」という題辞をオルガノンに付したと思われます。同時代の読者だけではなく、ヨーロッパの思想史を少しでも知っている人なら、「aude sapere」という言葉を聞けばすぐカントの名作「啓蒙とは何か、という問いへの答え」(Beantwortung der Frage: Was ist Aufklärung, 1784)が浮かびます。「啓蒙」という言葉は、フランス語の「lumières」ドイツ語の「Aufklärung」、英語の「enlightenment」の訳語で、日本語としてさほど一般に馴染みのある言葉ではないので、その意味もう少し見てみましょう。【蒙】は道理に暗いこと、覆い隠すこと、愚かなこと、無知なことを言います。

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ホメオパシー医学の基礎をまとめた大作『オルガノン』に、ハーネマンは「Aude sapere」(アウデー・サペレ)という題字をつけています。表紙に書かれたタイトル「医術のオルガノン」のすぐ下、ひときわ目立つ場所に、第二版(1810年)から第六版まで毎回この言葉を掲げています。「Aude sapere」はハーネマンの「オルガノン」の基調を表すと言ってもいい言葉です。そして、オルガノンを貫く精神はホメオパシーそのものであり、個々のホメオパスの心持ちにもなるはずです — 少なくともハーネマンの考えでは。残念ながら、ほとんどの英訳や邦訳にこの題辞のことは説明されていません。ラテン語の「Aude sapere」を日本語に訳すと、「知ることへの勇気を持ちなさい」「勇気を持って分別しなさい」「賢明になる勇気を出しなさい」「知恵を活かす勇気を持ちなさい」のような意味になります。あらゆる学校の門の上に刻んでもいいスローガンです。何があって、何のために、ハーネマンがこの題辞を選んだのか、もう少し探っていきましょう。

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1)花粉症の歴史と発生について。
病気にも歴史があります。人類にとって古い病気もあれば、新しい病気もあるのです。結核は人類の最も古い病気の一つです。紀元7.000年前の新石器時代の集落で発掘された骨や、紀元3.000年前のエジプトのミイラからも、結核の跡が見つかっています。喘息のような症状は、紀元前2.500~1.500年ごろから、すでに中国やバビロン、エジプトの医学書に記述されていたといいます。コレラは少なくとも紀元600年前以降、インドのガンジス川や谷に存在し、19世紀の初めから疫病として広く蔓延したようです。現代の「花粉症」と呼ばれる病気は、人類にとって非常に新しい病気です。古代ギリシャやローマ時代、あるいはイスラム文化圏の医学書を見ても、花粉症の症状を示す病気は記述されておらず、当時は花粉症という病気は一般的ではなかったと思われます。花粉症の症状が、初めて医学の視野に入ったのは、

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"Homeopathy is a much misunderstood medical art."
「ホメオパシーは多く誤解される医術です。」

"Homoeopathy has not changed at all since Hahnemann founded it, and since it has not been affected by all the modern knowledge it is thought to be obsolete. Medicine, on the other hand, is advancing dramatically every year. But as I wander between Hahnemann’s Organon and modern medical journals, I conclude that homoeopathy started in advance and that orthodox medical knowledge has not yet caught it up."
「ハーネマンが確立して以来、ホメオ

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『ホメオパシの歴史的発展』
ホメオパシーは200年の歴史を持ち、欧米、インド、南米において、近代医学誕生の前にも、その後にも、病気になった時のメジャーな医学の一つとして、社会や医療システムに根付いています。このホメオパシー医学の発達と普及の背景に何があるのか。当時の医学や近代医学に対して、どのようなメリットがあって、ホメオパシー医学が確立したのか。今回の話す会では、この観点からホメオパシーの誕生と成り立ち、そして歴史的発展を語ろうと思います。

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今年9月にベルリンに滞在したとき、一日遠足で、旧東ドイツにあるケーテン(Köthen)という街を訪ねました。ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)が1717ー1723年に宮廷楽長を勤めたことから、日本のクラシック音楽のファンにも良く知られ、日本人の観光客も多い街です。あまり知られていないのは、バッハのおよそ100年後に、ホメオパシーの設立者、サムエル・ハーネマンが1821年から1835年までケーテンに住んでいたことです。引っ越しの非常に多い人生(20回以上!)の中、いちばん長く一カ所に住んでいたのは、ケーテンでの15年間でした。日々の忙しい診療の傍ら、ホメオパシーの研究を続けながら、「慢性病」(Die chronischen Krankheiten )の5巻、そしてオルガノンの第3、4、5改正版を出版しました。

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